1. はじめに

 有機半導体のパターン形成の新手法として期待されている、有機半導体トナーの静電転写技術の最新成果を、千葉大学 大学院 工学研究科 教授の工藤一浩氏の研究室と日本化薬が、第77回応用物理学会学術講演会(9月9日~16日、新潟市の朱鷺メッセ)で発表した。転写に必要な印加電圧を従来の1/10に低減した。発表タイトルは「電子写真技術を用いた有機半導体トナーのパターニングにおける静電転写の低電圧化」。有機半導体トナーの静電転写は、筆者が2015年9月のコラム記事で取り上げた技術である(関連記事)。

2. 電子写真技術とは

 インクジェットをはじめとする印刷プロセスは、フレキシブル有機半導体デバイスを高スループットで生産するための技術として期待を集めている。しかし、現在研究されている印刷プロセスはいずれも、有機半導体をインク化する上で有機溶媒が必要である。気化しやすい有機溶媒は、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)として環境問題の一因となっている。VOCはその直接的な影響のみならず、太陽光を受けて化学反応を起こすと光化学オキシダントや浮遊粒子状物質発生の原因にもなる。地球環境保全のために、環境負荷が小さい持続可能な技術が求められている。

 これまで、有機溶媒フリーで有機半導体薄膜を形成する手法として、有機半導体を加熱及び加圧によって溶融・薄膜化する熱プレス法、ラミネート法および超音波溶融法を開発された。また、電子写真技術を用いた有機半導体材料の無溶媒パターニングも行われた。

 図1に、電子写真技術(ゼログラフィー技術)として、レーザープリンターなどトナー方式印刷が使われる技術の原理を示す。この方式は、光伝導物質を塗布した感光体ドラムにレーザー光線で文字や画像の形を照射して潜像を作り、トナーで現像して用紙に転写する。「帯電→露光→現像→転写→定着」という工程で1枚の印刷を行う。図2に、ダイレクト・トナー・マーキングの原理を示す。帯電した有機半導体トナーを電極パターンに転写する。本研究では、電子写真技術による有機半導体パターニングを検証している。

図1 電子写真技術
レーザープリンターなどのトナー方式印刷に使われる技術。千葉大と日本化薬の講演資料から
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図2 ダイレクト・トナー・マーキング
千葉大と日本化薬の講演資料から

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