順セル構造ペロブスカイト太陽電池の模式図(左)、ピリジン誘導体の分子構造(右)
右側がアルキル基(青色)のついた新たなピリジン誘導体の分子構造(出所:物質・材料研究機構)
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 物質・材料研究機構は10月6日、ペロブスカイト太陽電池のホール輸送層に使う新たな添加剤を開発し、安定性を大幅に向上させることに成功したと発表した。

 ペロブスカイト太陽電池は、材料となる溶液を塗布することで容易に作製でき、製造コストを大幅に低減できる太陽電池として期待されている。変換効率が20%以上となる開発例が報告され、研究開発がさらに盛んになっている。

 今回の添加剤は、同研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点の韓 礼元・上席研究員をはじめとする研究グループが開発した。

 ペロブスカイト太陽電池は変換効率が向上する一方で、安定性が課題となっている。

 特に高い変換効率で知られている、酸化チタン/ペロブスカイト/ホール輸送層で構成された順セル構造のペロブスカイト太陽電池は、安定性が低く、光照射のない状態でも劣化が進み、200時間で約3割も変換効率が低下する。

 この安定性の低さの原因究明と、新たな材料による長期安定性の向上が、実用化に向けた課題となっている。

 今回の開発では、順セル構造のホール輸送層に使う、ピリジン系の添加剤である「ターシャリーブチルピリジン(TBP)」に注目した。TBPは、ホール輸送層の導電性を増加させる効果を担っている。

 TBPとペロブスカイト材料による化学反応が、安定性を低下させる大きな原因となっていることを明らかにした。

 さらに、赤外分光やX線回折による分析の結果、この反応が、主にピリジン環にある窒素原子とペロブスカイト結晶の間で生じることを解明した。

 TBP の溶液をペロブスカイト層に塗ると、ペロブスカイト膜が黄色くなる。この黄色い物質は、ペロブスカイト結晶が分解して PbI2-(TBP) xという錯体が形成されたことによるものであることがわかった。これがペロブスカイト太陽電池の性能を低下させる原因となっている。

 この反応は、主にピリジン環にある窒素原子とペロブスカイト結晶の間で生じることから、この反応を防ぐために、窒素原子の隣接位置に、アルキル基を導入することで、二つの反応原子が空間的に近づくことを防ぐ立体障害効果を生じさせ、反応を抑制した。

 この工夫を施して作製したペロブスカイト太陽電池は、暗所において1000時間を経ても性能の低下が見られなかった。連続した光照射においても、初期効率の85%まで劣化するのに要する時間が、従来の添加剤の25時間弱から、150時間まで延びて安定性が6倍以上改善した。

 今回の研究成果の一部は、新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)の「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトの一環として得られた。今回の成果は、「Advanced Materials」誌オンライン版で10月5日 (現地時間) に公開された。