1. はじめに

 第77回応用物理学会学術講演会(9月9日~16日、新潟市の朱鷺メッセ)で、「酸化物エレクトロニクスの未来展望を描く」をテーマとしたシンポジウムが開催された。その中で、東京工業大学 フロンティア材料研究所 元素戦略研究センター教授の神谷利夫氏と同教授の細野秀雄氏から「なぜa-IGZO TFTが実用化されたのか」と題する発表があった。神谷氏が講演した。ここでは、その講演の概要を報告する。

2. IGZO実用化の歴史

 講演の内容は、IGZO TFTの歴史、他の技術(薄膜Si太陽電池用TCO、In代替問題および技術・経済以外の問題(政治など))、なぜIGZOは実用化されたのか、である。ここからは、IGZO実用化の歴史を他の技術と比較しながら述べる。

 実用化された酸化物機能材料を、図1に示す。強誘電体メモリー(FeRAM)はソニーのFelicaに採用された。抵抗変化メモリー(ReRAM)は2013年、パナソニックの8ビットコンピューターにサンプル出荷された。また、エレクトロクロミックを用いた車載用ルームミラーに一部採用されている。

図1 実用化された酸化物機能材料
東京工業大学教授の神谷氏の講演資料から。

 アモルファス酸化物半導体(AOS:Amorphous Oxide Semiconductor)によるTFTとして、アモルファスIn-Ga-Zn-O(a-IGZO)が報告されたのは2004年である。このa-IGZO TFTは、以下の特徴を持つ(図2)。

・室温プロセスが可能なので、フレキシブルディスプレーへの展開が期待できる
 (筆者注:TFTの安定性と信頼性を得るには熱処理が必須である)
・高移動度 10cm2/Vs以上
・大きいバンドギャップ Eg=3.0eV、可視光に対して透明である
・高い均質性、良好な安定性

図2 a-InGaZnO4(a-IGZO)TFTの発表
東京工業大学教授の神谷氏の講演資料から。
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