ナノシェルのモデル図
(出所:群馬大学・尾崎純一教授)
[画像のクリックで拡大表示]

 日清紡ホールディングスは9月22日、同社が開発を進める白金代替触媒「カーボンアロイ触媒」を採用した固体高分子型燃料電池(PEFC)スタックについて、フォークリフトなどの搬送装置に対する適用評価を開始したと発表した。

 PEFCは、燃料電池のなかでも、小型化しやすく、稼働・停止が容易なことから、燃料電池自動車(FCV)などへの採用が進んでいる。一方、触媒に高価かつ有限な資源である白金を用いるため、今後普及拡大していくには、白金に変わる触媒の開発が大きな課題だった。

 カーボンアロイ触媒は、希少資源である白金を一切使用せず、工業生産で安定供給が可能なカーボンを主原料としたPEFC向け電極触媒。12月には加Ballard Power Systems社が同触媒を用いたポータブル型PEFCスタックを販売開始する予定。PEFCスタックの空気極に同触媒を用いることで白金使用量を約80%削減したという。

 今回、ポータブル型PEFCスタックの実用化に続き、Ballard社と共同で同触媒の搬送装置向けの開発を本格化する。同触媒を、大きなエネルギーを必要とする産業機械や建設機械向け高出力PEFCスタックへ用途拡大することで、水素を燃料とした設備や搬送装置の低コストが進む可能性がある。

 現在、太陽光や風力発電の出力変動を吸収するエネルギーストレージとして水素製造が注目されており、PEFCとの組み合わせにより、製造した「再エネ水素」を電気に変換して利用する水素システムへの期待が高まっている。水素を燃料にした産業設備が普及すれば、水素システムの適用範囲が広がることになる。

 カーボンアロイ触媒は、群馬大学の尾崎純一教授が見出した「ナノシェル含有カーボン」に日清紡が着目し、共同研究を進めてきた。「ナノシェル」とは炭素の層が重なり、中が空洞になった中空球殻状構造になっている。直径は20~50 nm程度で、樹脂と金属を混ぜて焼くことで形成されるという。