TMDを用いた透明フレキシブル太陽電池
(出所:東北大学)
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グラフェンとTMDの構造および特性の比較
(出所:東北大学)
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(a)今回開発したデバイス構造、(b)電極材料の仕事関数実測値、(c)発電効率のΔWF依存性
(出所:東北大学)
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 東北大学は9月21日、原子オーダーの厚みを持つ二次元シート材料である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)を用いて、透明かつフレキシブルな太陽電池を開発したと発表した。透明な二次元シートを用いた太陽電池としては「世界最高」(同大学)の発電効率0.7%を達成し、実用化に向けて大画面基板で作成可能であることを実証したという。

 原子オーダーの厚みから構成される二次元シート材料としては、炭素から構成されるグラフェンが有名だが、グラフェンシートはバンドギャップを持たないため、半導体エレクトロニクス分野への応用は困難とされていた。これに対し、遷移金属(モリブデンやタングステン)とカルコゲン原子(硫黄やセレン)から構成されるTMDは、半導体特性を示すことから、同分野で注目を集めている。

 研究チームは今回、実用化が可能なシンプルなデバイス作製を念頭に、TMDを利用した透明なフレキシブル太陽電池の開発を目指した。電極とTMDとの間に自発的に形成されるショットキーと呼ばれる電位構造を利用して発電するショットキー型太陽電池に注目し、用いる電極と形状を最適化した。

 両端に設置する電極の種類を変えた異種金属電極構造を用いて、両端電極対の組み合わせを変えたところ、両端電極の仕事関数差(ΔWF)が大きくなるに連れて発電効率(PCE)が向上することを見出した。さらに、電極間隔を短く(~2μm以下)かつTMDを基板に接触しない架橋型とすることで発電効率が大幅に向上することが分かり、最大0.7%(AM1.5G照射)の発電効率を実現したという。

 同手法は、半導体デバイス製造プロセスで現在、一般的に用いられるリソグラフィを用いて容易に電極を大面積基板にデザイン可能で、基板にTMDを塗布するだけで太陽電池を形成できる。実際にシリコン基板にあらかじめパターンニングした電極にTMDを塗布してセンチメートルオーダーの太陽電池を作成し、発電できることを確認したという。

 このほか、光の波長によって発電効率が異なることが分かり、TMD特有の励起子とバンド構造の関係に由来することを見出した。

 透明な太陽電池は、原理上光を透過しないシリコン太陽電池より発電効率は低くなるが、自動車のフロントガラスやビルの窓、携帯電話ディスプレイの表面、人体の皮膚など、あらゆる場所へ設置できるため、実社会において大きな技術革新が期待される。今回の研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」電子版に9月20日(日本時間)掲載された。