1. はじめに

 国際会議「International Conference on Flexible and Printed Electronics 2016(ICFPE2016)」(2016年9月6~8日、山形大学)では、セルロースナノファイバーによる透明ペーパー関係のセッションが設けられ、大阪大学 産業科学研究所 セルロースナノファイバー研究分野 准教授の能木雅也氏が座長を務めた。本セッションのトピックスを2回にわたって紹介する。今回取り上げるのは、王子ホールディングスによるセルロースナノファイバーに関する発表である。公表されている情報と講演の要旨を述べる(図1)。

図1 セルロースナノファイバーシート、樹脂複合化フィルム(出典:王子ホールディングスのニュースリリース)
透明シート
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多孔シート
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樹脂複合化フィルム(多孔シートと樹脂を複合化)
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2. セルロースナノファイバーの製法

 セルロースは植物の細胞壁の主成分であり、植物の形態を保つ役割を担っている。樹木は、その7割がセルロース類で構成されている。セルロース同士が絡まり、束になって強い細胞組織を作っている。セルロースは、紙の主原料(パルプ)としても知られている。千から数千個のグルコースが結合した多糖類の一種であり、長い高分子である。互いに水素結合して整然と並んでおり、結晶化すると非常に高い強度を示す。この束をミクロフィブリル(微細繊維)と呼ぶ。

 セルロースナノファイバー(CNF)とは、木材をはじめとする植物細胞壁の基本骨格であり、その幅はわずか4nm~15nmである。樹木は階層構造を有しており、植物細胞壁で合成されたCNFは、樹木の内部で幅数10μmの細胞壁・パルプ繊維を形作っている。従って、CNFを製造するためには、CNFを切断・溶融することなく、効率的に植物細胞壁やパルプ繊維を解繊処理する必要がある。

 このCNFを植物細胞壁から単離する技術は、(1)TEMPO酸化触媒で化学的処理する方法や、(2)機械的な方法によって確立されている。(1)の化学的処理は、東京大学教授の磯貝明氏らのグループが開発した。同グループは、パルプ繊維へTEMPO酸化触媒で化学的処理するとCNF同士の相互反発力が与えられ、極めて軽微な機械的解繊処理によって幅4nmの超微細なCNFが得られることを明らかにしている。

 (2)の機械的な方法は、京都大学教授の矢野浩之氏らのグループが開発した。湿潤状態の木材パルプ繊維へ機械的な解繊処理を行う方法である。この解繊方法では、幅15nmのCNFが得られる。この際、解繊処理方法や処理装置の種類はあまり重要ではない。最も重要な点は、木材細胞壁からリグニンは完全に除去し、ヘミセルロースは残存させた状態で機械的な解繊処理することである。

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