1. はじめに

 国産有機EL(OLED)の量産に挑む「JOLED」。同社でCTOを務める田窪米治氏が、国際会議「International Conference on Flexible and Printed Electronics(ICFPE)」(2016年9月6~8日、山形大学)でプレナリー講演を行った。本講では、その講演要旨と、筆者の考えを述べる。

2. JOLEDの技術

2.1 有機EL色塗り分け技術

 有機ELパネルのEL層(発光層)を形成する技術には、図1に示すように、蒸着方式と印刷方式がある。また、EL層の構成には、大きく分けて2つの方法がある。1つは、EL層をパネル全面にベタで積層形成して白色発光させるもの。もう1つは、RGBの3色のEL層をパネルの画素ごとに繰り返し並べて形成し、発光させるものである。前者は大型有機ELテレビの量産に用いられ、後者はスマートフォン用など小型パネルの量産に適用されている。白色発光の場合は、カラーフィルター(CF)によって RGBの発光を個別に取り出す必要がある。CFによって発光の約3/4が遮断されるため、色純度と発光効率が相反する関係になる。

図1 色塗り分け技術の比較
JOLEDの資料。
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 現在多くの企業で採用されているのは蒸着方式である。真空環境で材料を加熱、気化させて、EL層を形成する。しかし、この方法は、プロセス環境を真空にするための設備が必要である。パネルの必要な部分にのみ膜を形成するために、マスクと呼ばれる遮蔽版を使うことになる。白色蒸着方式では枠のみで遮蔽すればいいが、3色蒸着方式ではRGBの膜を3回に分けてそれぞれ決められた場所に形成する必要がある。このため、3色蒸着方式は白色蒸着方式とは異なり、画素数に応じた精細なマスクが必要になる。しかも、必要なマスクの数は3倍になる。また、画面サイズが大きく、画素数が多くなるほど、マスクの位置精度への要求は厳しくなる。

 さらに、パネルが大型化するのに伴い、蒸着源とパネルとの距離が離れるため、均一な膜を形成することが難しくなるという課題や、気化した材料が真空設備の内壁やマスクに付着するため材料の利用効率が低くなるという課題もある。資源の有効利用からも望ましい方法とは言えない。

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