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スズ系ペロブスカイト太陽電池、高品質な成膜法を開発

2018/09/12 10:15
工藤宗介=技術ライター
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今回開発した成膜手法と従来手法との違い。従来手法では結晶の粒がまばらで隙間が空いている。今回開発した手法では全体が隙間なく覆われ形の整った結晶の膜が作られる
(出所:京都大学)
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 京都大学および大阪大学らの研究グループは9月6日、溶液を塗布することで均一性が高く高品質なスズ系ペロブスカイト半導体膜を得られる独自の成膜法を開発したと発表した。再現性が良く高い光電変換効率を示すペロブスカイト太陽電池を作製できる手法を確立したという。

 次世代の高効率太陽電池として注目されるペロブスカイト太陽電池では、これまでに鉛系ペロブスカイト太陽電池が20%以上の高い光電変換効率を実現している。しかし、鉛が及ぼす環境や人体への影響への懸念から、鉛を用いない新たなペロブスカイト材料の開発が強く求められている。

 鉛の代わりにスズを原料に用いたスズ系ペロブスカイト太陽電池は、環境負荷の少ない次世代太陽電池の有力候補として注目を集めているが、材料中のスズイオン(Sn2+)が酸化されやすいなど、太陽電池の高性能化に課題が残されていた。これまでのスズ系ペロブスカイト太陽電池は、光電変換効率が数%と低く、再現性にも乏しいという問題があった。

 今回、特に再現性よく高性能太陽電池を得るためのスズ系ペロブスカイト半導体膜の作製手法の開発に焦点を当てて研究を進めた。まず8%を超える光電変換効率が得られると報告されている手法に従ったところ、実際の数値は報告値と大きく異なり0~3%に留まった。得られたペロブスカイト半導体膜を電子顕微鏡で観察すると、多くの穴が空いた表面被覆率の悪い膜しか得られないことが分かった。

 溶液を塗って乾燥させた半導体膜が生成する過程を検討し、基板上に塗った溶液に貧溶媒(材料が融けにくい溶媒)を滴下する際、2つの溶媒がより激しく混ざり合うことでより多くのペロブスカイト材料の結晶核が一気に析出されると推測。そこで、滴下する貧溶媒を温める「ホット・アンチソルベント・トリートメント法(HAT法)」により、膜の均一性が向上し、65度が最適であることを見出した。

 次に、加熱して残った溶媒を飛ばす際、結晶をできるだけゆっくり成長させてより大きい結晶を作製するため一定時間蓋をして溶媒の蒸気圧を制御した。条件を詳細に検討した結果、最初の10~30秒だけ蓋をして加熱する「ソルベント・ベイパー・アニーリング法(SVA法)」により、大きな結晶性の塊(グレイン)を持つ均一な半導体膜が作製できることを見出した。

 この2つの手法を組み合わせることで、均一性の高いスズ系ペロブスカイト膜を作製することが可能になり、再現よく光電変換効率7%を超えるスズ系ペロブスカイト太陽電池が作製できるようになった。今後、この技術をもとに、スズ系ペロブスカイト材料開発およびデバイス構造の改良・開発研究が大きく進み、環境負荷の少ないペロブスカイト太陽電池の研究が活発化すると期待される。

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