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ビスマス系の高性能光応答素子、次世代太陽電池に道

2018/09/09 21:12
工藤宗介=技術ライター
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硫化ビスマス粉末
(出所:JST)
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今回開発した2段階の熱処理を施す薄膜生成プロセス
(出所:JST)
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 大阪大学らの研究グループは9月6日、価格・低毒性・安定性に優れた硫化ビスマス(Bi2S3)の成膜プロセスを開発し、高性能光応答素子の作製に成功したと発表した。次世代太陽電池材料の開発につながる成果としている。

 2段階の熱処理を施すことで光電気特性と膜平坦性を両立し、従来プロセスと比べて光応答性能が6~100倍向上したという。

 粉末でも簡便に光電気特性を評価できるマイクロ波分光法を用いて200種類以上の材料を評価し、硫化ビスマス粉末が高い光電気特性を示すことを見出した。硫化ビスマスは溶媒に溶けにくい粉末材料であることから、前駆体を溶かした溶液から薄膜を作製し、続いて硫化する新たな熱処理プロセスを開発した。

 複数の前駆体と溶媒を試した結果、プロピオン酸を溶媒として前駆体をスピンコートして熱処理すると、平坦で均一なアモルファス性の薄膜が形成できることを見出した。さらに、希釈した硫化水素ガス(H2S)雰囲気下で熱処理すると硫化・結晶化が起こり、光電気特性と膜平坦性を兼ね備えた高品質な硫化ビスマス薄膜を形成した。

 今回開発したプロセスでは、多結晶形成に関わる核生成と結晶成長を独立したプロセスに切り分けることで、それぞれの最適化に成功した。作製した素子は、大気中・室内で3カ月放置した後も性能を維持しており、高性能に加えて長期安定性にも優れるという。

 硫化ビスマス薄膜は、ペロブスカイト太陽電池における鉛を使わないペロブスカイト材料や、フォトレジスタにおける有毒なカドミウムの代替素材などに期待される。また、今回開発したプロセスは他の硫化物にも適用可能。硫化モリブデン(MoS2)や硫化タングステン(WS2)などが優れた電気特性を持つ層状化合物として注目されている。

 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業の一環で、科学研究費補助金の支援も受けた。研究成果は、米国化学会誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」オンライン速報版に9月5日(米国東部時間)掲載された。

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