2016年8月30日に開催された、エレクトロニクス実装学会 プリンタブルデバイス実装研究会 公開研究会『実用化が進むプリンテッドエレクトロニクス技術』の様子。
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 エレクトロニクス実装学会 プリンダブルデバイス実装研究会 公開研究会「実用化が進むプリンテッドエレクトロニクス技術」が開催された。現在、プリンテッドエレクトロニクス関連で注目を集めているものの1つが、伸縮する素材を基板とする「ストレッチャブルエレクトロニクス」だ。研究会では、富士通研究所 ネットワークシステム研究所 フロントネットワーク運用管理プロジェクト 主任研究員の中本裕之氏が「フレキシブルビーコン」について講演した。

 同社が開発するフレキシブルビーコンは、柔軟性のあるシリコーンシートに無線モジュールと薄膜太陽電池、蓄電素子、電源制御回路を実装し、Ag粒子ペーストのスクリーン印刷で配線したもの。照明器具の光から駆動電力を得る。電源監視回路は不要時に自身の信号でパワーダウンしたり、太陽電池からの電力を直接無線通信回路に供給したりするなどの工夫により、部品点数の削減を図り、厚さ3mm、重さ3gのビーコンを実現した。電源制御回路などは伸び縮みしない部品を実装している。そのため、部品は1cm四方以下の“小島”に分け、それぞれの“小島”を離して実装することで、基板を曲げたときに生じる応力を分散させているという。例えば、蛍光灯の管に巻き付けるような使い方も可能とする。

 こうしたプリンテッドエレクトロニクスで、長らく問題となっているのが「配線」の素材だ。富士通研究所の例のように、現在はAg粒子ペーストを使うのが一般的になっているが、Agは湿度があるとマイグレーションを起こしやすいという課題があり、また素材そのものの価格が高いこと、性能を高めるためにナノ粒子に加工したものはさらに加工費が高いことから、量産には向かないという意見も根強い。そこで待望されるのが、一般的な配線基板にも使われるCu粒子ペーストだ。

 一方、銅は酸化しやすいという特徴があり、酸化防止のために皮膜を強くすると低温焼成が難しくなるという課題がある。四国化成工業 化学品事業 電子化学材料営業部 担当課長の横江一彦氏は、同社の銅錯体を使ったCuペーストの開発品について講演した。これはアミンで錯体化した銅錯体は比較的低温の加熱により金属銅を生成する、という特性を利用したもの。同社ではPETフィルムへの印刷を想定し、130℃以下の加熱でCu膜を形成し有機物残さの残らない銅錯体を開発した。

 銅錯体ペーストは結晶化しやすく、常温で2日もしないうちにジャリジャリになるという。同社では、銅錯体の配位子(アミン)に注目し、複数種の配位子を混ぜることで、結晶化を抑えペーストの粘性を調整する方法を開発したという。塗布面は親水性である必要があり、ポリイミドの場合はアルカリ処理、PETの場合はUV処理が必要だが、密着性評価の結果は良好だったとする。表面のカルボキシル基に結合しているためと推測する。

 開発品の課題としては、吸湿性と焼き縮みを挙げる。銅錯体は親水性があるため、時間が経つと配線のエッジがぼけてくるという。また、80%ほどは有機物で、焼成時に揮発するため、厚さ50μmに印刷しても焼成後の配線の厚さは2~3μmに焼き縮んでしまう。会場からは、「120℃焼成時の体積抵抗率が約30μΩ・cm」というデータに対して、「抵抗率が大きすぎる。焼き縮みがある割に応力の影響が見られないことと併せて考えると、銅のバルク化が十分ではなく、空隙が多いのではないか」という意見が出た。

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