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バイオマスを液体燃料に転換、「FT合成」の低コスト化

2018/08/27 15:44
工藤宗介=技術ライター
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今回開発した新しいFT合成触媒の原理
従来型のFT触媒は、コバルトの粒子サイズが小さいとLPGなど軽質炭化水素に(図1)、粒子サイズが大きくなると炭素連鎖が伸びて軽油など液体炭化水素燃料になる(図2)。シリカ層に覆われた新FT触媒では、小さな粒子表面で生成された軟質炭化水素が触媒金属表面に再吸着し、炭素連鎖を伸ばして軽油などに成長する(図3)。または近隣の小さな粒子に再吸着して液体燃料になる(図4)(出所:富山大学、NEDO)
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 富山大学らの研究グループは8月14日、コバルトの使用量を大幅に削減できるカプセル型FT(Fischer-Tropsch)合成触媒を開発したと発表した。従来の担持型FT商業触媒では30~40%だったコバルト含有量を5~10%以下まで削減できる。

 電気自動車(EV)の普及などによりコバルトの価格が2年前の3倍と急騰していることから、軽油などを生産する巨大FT合成プラントではコバルトの使用量削減が重要な課題だった。

 バイオマスなど再生可能エネルギー由来の水素を使って液体の炭化素燃料に転換するなど、再エネの2次エネルギー転換技術を低コスト化できる可能性がある。

 FT合成は、合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)から軽油などの石油代替燃料、アルコール、オレフィンといった基礎化学品を合成する触媒反応のこと。金属ナノ粒子のサイズが製品である炭化水素分子の長さ(炭素チェーン)の長さを決定し、大きいナノ粒子は分子の長い軽油とジェット燃料を合成し、小さなナノ粒子は分子の短いLPG、軽質オレフィンを合成するのが基本定説だった。

 研究グループは今回、FT合成の基本定説を覆し、シリカ層に覆われたコバルト触媒において、大きいナノ粒子の10分の1程度の小さなコバルトナノ粒子で分子の長い軽油とジェット燃料を合成できることを見出した。また、大きなコバルトナノ粒子を使って分子の短いLPGや軽質オレフィンの合成も可能にした。

 カプセル触媒構造のような閉じ込められた空間内部では、小さなコバルトナノ粒子表面のカルベン濃度が高く、一旦脱離した炭化水素が再吸着されやすくなり、炭素連鎖成長が加速された。一方、シリカに覆われた大きなコバルトナノ粒子表面は、表面コバルト原子の配位不飽和度が低く、金属原子と一酸化炭素の結合が弱くなり、カルベン濃度が低くなった

 ほとんどのFT合成商業プラントでは、主にコバルト触媒を用いて、天然ガス・石炭・バイオマスから液体軽油を生産している。今回の成果により、コバルトの使用量を大幅に削減したFT合成プラントの新規商業触媒としての実用化を目指す。また、今回の反応は、CO2の水素化から炭化水素および含酸素化合物の合成(FT合成のCO2版)にも適用できる。さらに、二酸化炭素の転換による軽油合成に応用することも目指すとしている。

 今回の研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「超空間制御に基づく高度な特性を有する革新的機能素材等の創製」の研究課題「超空間制御触媒による不活性低級アルカンの自在転換」の一環として、中国・天津大学と共同で実施した。研究成果は、英科学誌「Nature Communications」オンライン速報版に8月14日(英国時間)掲載された。

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