(左)太陽光と酸化物光電極を用いたナイロン原料合成の模式図、(右)光電極の写真
(出所:産総研)
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 産業技術総合研究所(産総研)は8月2日、太陽光を利用することでナイロンの原料であるKAオイルを常温・常圧下で合成する技術を開発したと発表した。高付加価値の有用化学品を太陽光とわずかな電気から合成できるという。

 酸化タングステン薄膜の半導体光電極に、わずかな外部電圧をかけて疑似太陽光を照射することで、シクロヘキサンの直接酸化によってKAオイル(シクロヘキサノン+シクロヘキサノール)を高選択的(約99%)に合成できることを見出した。

 酸化タングステン薄膜の半導体光電極は、タングステン酸を含む前駆体溶液を導電性ガラス上にスピンコートし、大気下で焼成することで簡単に作製できる。シクロヘキサンと硝酸を含む反応溶液に酸素が溶存している状態で光電極に擬似太陽光照射を行うとKAオイルが生成した。さらに外部電圧をかけると生成速度が最大6倍程度まで向上した。

 作製した半導体光電極は安定であり、複数回利用しても問題なく動作した。一方、疑似太陽光を照射しないと2V以下の外部電圧では電流が流れずKAオイルを生成できなかった。また、酸素が存在しない場合もKAオイルを生成できなかった。

 飽和炭化水素であるシクロヘキサンのC-H結合は非常に強固で、結合の切断や活性化には高温でエネルギーを投入したり、反応性の高い特殊な酸化剤を用いる必要がある。KAオイルは現在、高温・高圧下で多大なエネルギーを使用して製造されており、環境調和性の観点から革新的な新規プロセスの開発が強く求められていた。