ナノチューブに巨大な光起電力、次世代太陽光に道

東大・阪大など、量子力学原理に基づく新材料を発見

2019/06/21 01:20
工藤宗介=技術ライター

 東京大学と大阪大学らの研究グループは6月20日、独マックスプランク固体研究所およびイスラエル・ワイツマン科学研究所との共同研究で、真性半導体である二硫化タングステン(WS2)のナノチューブに巨大な光起電力効果を発見したと発表した。新しい量子力学的原理に基づく発電材料、光検出器への応用につながると期待される。

 従来の太陽電池の動作原理には、p-n接合などの界面で発生する光起電力効果が用いられている。光起電力効果を誘起するには反転対称性のない物質を用いる必要があり、p-n接合も界面を挟んで異なる物質がつながっているため反転対称性が破れているとみなすことができる。

 一方、界面を形成していなくても結晶構造そのものに反転対称性が破れていれば光起電力が発生する可能性があり、この現象はバルク光起電力効果(BPVE)と呼ばれる。近年、シフト電流と呼ばれる量子力学的原理に基づく機構の提案や、理論研究により低次元半導体物質の高い状態密度が高い変換効率を示すことが示唆され、注目を集めている。

 研究チームは今回、代表的な2次元物質として知られる遷移金属カルコゲナイドのひとつであるWS2に着目した。バルクのWS2は二層を一単位とする繰り返し構造であり反転対称性を持ち、単層を取り出しても120度の角度を持つ対称性が残る。これらの対称性は、WS2の2次元層を丸めてナノチューブにすることで破ることができる。

 二層WS2、単層WS2、WS2ナノチューブを用いたナノデバイスを作成し、レーザー光を照射して光起電力変化を調べた結果、WS2ナノチューブのみ優位な光起電力効果を示した。また、レーザー光の照射位置を変化させていくと、レーザー光がWS2ナノチューブ中央付近にある時に光電流が大きくなり、電極に近づくにつれて減衰することが分かった。

二層WS2は縦・横・奥行き方向を同時に反転、単層WS2は120度回転させると元の構造に一致する。WS2ナノチューブは、これらの操作を施しても元の構造とは一致しない
(出所:東京大学・大阪大学らの共同発表)
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 この振る舞いは、観測された光起電力がWS2ナノチューブの中で発生しており、WS2ナノチューブと電極の界面における光起電力効果とは一線を画するものであることを示唆している。さらに、光電流の光強度依存性のデータは、理論的に予測される量子力学的なシフト電流の特徴と類似しており、観測された光電流がシフト電流であることを示唆している。

 また、単層WS2では光起電力効果が観測されなかったことは、光起電力効果が物質の対称性に強く依存していることを示す。今回の成果は、同じ物質であってもナノ領域の構造によって対称性を制御し、BPVEという新たな機能性を創出できることを明らかにした。ナノチューブのほかヘテロ接合、超格子の構築など、さまざまな構造制御が可能な2次元物質には大きな可能性があることを示唆している。