長野県内メガソーラー計画で、土地所有を巡り「住民監査請求」

富士見町「ロケ聖地」開発に住民有志が反対運動

2019/06/20 20:01
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ
造成前の中学林。南アルプスと甲斐駒ケ岳が望める
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造成工事が始まっている
(出所:日経BP)
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事業用地の下流になる沢
(出所:日経BP)
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 長野県富士見町で進んでいるメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設計画を巡り、 今年5月末、住民有志が住民監査請求の手続きに踏み切った。事業用地の土地所有権の正当性を明らかにするのが目的で、こうしたケースで住民が監査請求を行うのは全国的にも珍しい。

 事業用地は「中学林(なかがくりん)」と呼ばれる約12.6haの原野で、出力4.9MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設計画が進んでいる。事業主体は、京セラTCLソーラー合同会社で、敷地を所有する財産区が土地を造成したうえで、同合同会社が賃借して太陽光発電設備を建設し、固定価格買取制度(FIT)を利用して発電事業を行う。

 このメガソーラープロジェクトに関しては、長らく遊休地だった中学林を有効活用することを目的に、所有者である財産区と発電事業者が富士見町に開発許可を申請し、町環境保全審議会の審議を経て昨年11月に許可を取得した経緯がある。

 一方で、中学林は、映画やテレビドラマの撮影で頻繁に使われ、「ロケ聖地」として知られていたこともあり、周辺地域の住民から反対運動が起きている。計画に反対している住民有志によると、NHKの大河ドラマや映画など、ここ数年頻繁に大規模なロケが行われることで、宿泊費や食費など年間3000万円近い経済効果があるとの試算もあることや、建設地から雨水が流れる沢の下流域では、かつて土石流が発生した経緯もあり、現在のメガソーラー計画の土木設計では、再び土砂災害の起きる危険性があることなどを反対の理由に挙げている。

 こうしたなか、住民有志は今年5月末に財産区が中学林の所有権を得た経緯が不透明だとして町監査委員に住民監査請求を行った。登記簿謄本によると、2001年8月に「真正な登記名義の回復」を理由に町から財産区に土地所有権が移転していた。この経緯が不透明なことから当初、町に情報公開を求めたものの、利害関係者でなく認められなかったことから、住民監査請求という手続きに至ったとしている。

 仮に中学林の正当な所有権者が財産区でなく町とすれば、メガソーラー計画を進めるプロセスには、これまでとは違った手続きが必要になると、住民有志は主張する。

 町はこれを受け、中学林の所有権が財産区に移転した経緯について調査を始めている。

 もともと中学林を含む富士見町境の原野は、1940~50年ごろに個人から旧境村の所有になったと見られ、1955年に旧境村を含む町村合併で誕生した富士見町が承継の形で、所有権を引き継いだ。一方、1960年代に境地域一帯の原野は、県によるリゾート開発が行われ、対象となった地域は町から県に無償で提供された経緯もある。こうしたなか、最終的に開発されずに原野のまま残った中学林について、2001年8月に「真正な登記名義の回復」を理由に町から財産区に土地所有権が移転していた。

 今回、町の調査によって、県に提供されなかった土地については、「財産区のものとする」という覚書が、1973年に町と財産区の間で取り交わされていたことが分かったという。2001年8月の「真正な登記名義の回復」を理由とした財産区への所有権移転は、この覚書に基づいたもので、法的に問題はないとしている。