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スイスの国民投票、欧州で2国目の脱原発を可決

2017/05/23 17:21
大場 淳一=日経BP総研 クリーンテック研究所
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 スイスで5月21日、現行の電源構成に関する是非を問う国民投票が行われ、原子力発電を段階的に廃止し、再生可能エネルギーの比率を高めるべき、との票が58%を占めた。

 この結果、スイスでは原発の新設が禁止され、2018年以降、原子力発電所の停止や廃炉に向けて具体的な計画を策定することになる。欧州では、ドイツが原発を2029年までに段階的に廃止することを既に決定しており、スイスが2国目となる。

 スイスの電源構成では、水力が50%強と最も多く、次いで原子力が約33%、残りの大半を火力やバイオマスが占め、風力や太陽光は1%未満となっている。

 原子力に関しては現在、国内4カ所の原子力発電所で合計5基の原子炉が稼働しているが、いずれも老朽化が進んでいる(表)。

発電所名稼働年方式出力 [MW]
ベツナウ(Beznau)1号基1969加圧水型365
2号基1972加圧水型365
ミューレベルク(Mühleberg)1972沸騰水型355
ゲスゲン(Gösgen)1979加圧水型970
ライプシュタット(Leibstadt)1984沸騰水型1,165

スイスの原子力発電所はいずれも古く、老朽化が進んでいる
(公開情報を基に日経BP総研 クリーンテック研究所が作成)

 最も新しいライプシュタット原発でも稼働を開始して既に30年以上が経つ。50年近く運転を続けている最古のベツナウにいたっては、「世界最古の原発」と揶揄する声まであるという(図)。

スイス北部のアールガウ(Aargau)州ドッティンゲン(Döttingen)にある「ベツナウ原子力発電所」。左側に水力発電所も見える
(出所: Public Domain/CC by SA 3.0)
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 スイスでは、日本で原発事故が発生した2011年にも国民投票が実施されていた。最近では2016年11月にも緑の党が主導し、2029年までの原発全廃についての是非を問う国民投票が行われたが、その結果は僅差で否決というものだった。

 緑の党のRegula Rytz代表は、「今回、スイス国民は原発の新設に『ノー』を突き付け、再エネの開発に『イエス』と答えた。条件も整い、経済と家計が将来のために責任を持って(エネルギー転換に)取り組むことになる。本当に素晴らしいことだ」と、述べている。

 今回の国民投票では、原発全廃の具体的な期限が示されていない。このため、安全性が担保されている原発は稼働を続けられるとみられるが、ベツナウなど老朽化の進んだ原発を即時に廃炉にすべきとの主張も根強い。

 スイスでは今後、各原発の廃炉計画の明確化とともに、再エネの大量導入や省エネルギーの推進などの具体化が急務となりそうだ。

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