「直流マイクログリッド」に現実味、再エネを直送!?

2018/04/23 21:16
金子 憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ 、工藤宗介=技術ライター

 東京電力ホールディングス(東電HD)とNTTは4月18日、新たなエネルギーインフラの構築に関して提携。両社のインフラ資産を活用した地域単位での直流グリッドの概念を初めて提起した。

 共同出資会社「TNクロス」を設立し、7月から事業を開始する。資本金は1億円、株主構成は東京電力HDが50%、NTTが50%。7月2日設立の予定。

3つの事業領域を想定

 今回の発表のなかで、新事業として想定しているのは、(1)太陽光や風力など、変動性の再生可能エネルギーの系統負荷を減らすための調整力の提供、(2)太陽光や蓄電池を直流ベースでネットワーク化したマイクログリッド、(3)それらを活用した新たな基盤サービスーーの3つを挙げている。

 (1)に関しては、東電の持つ広域の一般送配電網を介して、太陽光と風力発電の出力変動を、NTTの持つ通信用蓄電池と予備用発電機を活用して平準化する。いわゆるVPP(仮想発電所)と呼ばれる仕組みで、これにより再エネの大量導入を支援する。

 NTTは現在、270万kWhの鉛蓄電池を通信ビル(電話局)に設置しており、今後、それらをリチウムイオン電池に置き換えていく。リチウムイオン電池は鉛電池によりも出力密度が高いため、置き換えに伴い最大で550万kWh分の設置スペースができるという。

 東電管内だけでも、鉛電池と置き換えるリチウムイオン電池の容量は50万kWh、空きスペースは最大250万kWhの容量になるという。両方を足し合わせた300万kWhのリチウムイオン電池は、500万kWの風力発電の調整力に相当するという。

 (2)の直流マイクログリッドに関しては、蓄電池や予備用発電機の電力を新たに敷設する直流ケーブルを介し、緊急時に地域の防災拠点やビルの共用エレべーターなどに送電することをイメージしている。両社はこれを「地域直流グリッド」と呼んでいる。

 NTTは、関東エリアに1200カ所の通信ビルを持ち、通信ケーブル用の地下管路(洞道)は延べ300km、東電は1600カ所の変電所を持ち、洞道は延べ500kmに達するという。こうした管路に直流ケーブルを敷設し、300万kWhのリチウムイオン電池から非常用電力を送電すれば、100万戸の住宅に1kWの電力を3時間、供給できる。

 また、(3)に関しては、こうしたインフラ基盤をベースに、様々な異業種と連携することで、新たなサービスを提供したいとしている。例えば、電気自動車(EV)や太陽光発電設備の保有者、再開発ビルなどが顧客ターゲットになるという。

 今回の提携で注目されるのは、「地域直流グリッド」という新しいマイクログリッドの概念を提起したことだ。直流電源である太陽光や蓄電池からの出力を交流に変換せず、直流のまま送電し、情報機器など直流機器で利用すれば、電力システムとしてロスが少なく省エネにもなる。これまで、東北大学の校舎内で直流配電網を構築した例や、北海道石狩市のデータセンターが近隣の太陽光発電所から直流で受電するケースがあったが、地域単位で直流ネットワークを構築する試みはなかった(関連記事)。

NTTと東京電力による提携のイメージ
(出所:NTT、東京電力)
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「自営線マイクログリッド」で再エネ供給

 加えて、事業的に注目されるのは、自営線の敷設に既存の管路を活用することだ。これまで一般送配電から独立して自営線マイクログリッドを構築しても、新たに送電線を敷設するコストが高く、事業的に合わないとされてきた。こうした事業性評価では、電柱や地下管路を新設して自営線を敷設することが前提になっていた。国内では、宮城県東松島市で、補助金を活用し、電柱新設による自営線マイクログリッドを構築した例がある(関連記事)。

 電気や通信のケーブルを支えるインフラを握っている両社が組めば、既存の電柱や管路に自営線を敷設することも容易になる。そうなると、ケーブルの敷設コストが劇的に下がる可能性が高く、自営線マイクログリッドの事業性が飛躍的に向上する。
 
 今回の両社の提携では、「地域直流グリッド」を、一般送配電網が停電した緊急時のBCP対策として位置付けているが、平常時でも自営線による電力供給で事業性が確保できる可能性が出てくる。

 NTTグループでは4月16日、NTTファシリティーズが固定価格買取制度(FIT)を活用しない「再エネ供給サービス」を始めると公表した。このサービスでは、同一敷地内の再エネを自家消費するか、離れた再エネ電力を一般送配電網で託送することが前提になっている。

 これに将来、「地域直流グリッド」が加われば、太陽光の電力を自営線で需要家に供給するという3つ目の選択肢が可能になる。BCPと環境価値に加え、自営線のコストが下がれば、託送料不要による投資回収が早まる上、電気ビルの蓄電池を組み合わせれば、ある程度、需要に合わせた再エネ電力の供給も可能になる。

 「RE100」など、再エネ利用を経営課題に掲げる企業が増える中、グリーン電力証書など環境価値取引によらない、再エネ調達手段として需要が見込める。

 ただ、東電とNTTグループが連携してこうした自営線による「再エネ・直送」サービスを始めた場合、既存の管路や電柱の利用に関して、外部企業に対する競争上のイコールフッティングをいかに確保するか、という課題が顕在化しそうだ。

宮城県東松島市で稼働中の自営線マイクログリッド
(出所:日経BP)
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