産業技術総合研究所(産総研)は2017年4月14日、高温超電導体のイットリウム系酸化物超電導線材の超電導層の形成プロセスを改良し、現時点で世界最高の磁場中臨界電流密度を達成したと発表した(ニュースリリース)。イットリウム系酸化物超電導線材は、他の高温超電導材料に比べて磁場中での性能が高く応用開発が期待されるが、現状では線材が高価であることや高温・高磁場(液体窒素中で数テスラ)では磁場中での臨界電流値が十分でないなどの課題があった。昭和電線ケーブルシステムおよび成蹊大学との共同研究となる。

■イットリウム系超電導線材の模式図
(図:産総研のニュースリリースより)
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 高温超電導体は超電導が生じる温度が高く、安価で豊富な液体窒素を冷却に利用できるため、今後の応用が期待されている。しかし、超電導状態を維持して通電できる電流は、周囲の磁場が強くなるとともに減少するという性質がある。そのため、線材に強い磁場が加えられる環境で使用する機器(MRI、NMR、医療用を含めた加速器、産業用モーター、航空機用モーター、発電機、リニアモーターカー、核融合、超電導電力貯蔵システム、超電導変圧器など)には、磁場中でも高い特性を維持する線材が必要になる。

 産総研では、その前身である国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)の頃から昭和電線ケーブルシステムおよび成蹊大学と共同で、低コストプロセスである溶液塗布熱分解法によるイットリウム系酸化物の高性能・長尺超電導線材の開発を進めてきた。溶液塗布熱分解法は、イットリウム塩、ガドリウム塩、バリウム塩、銅塩、人工ピン材料などからなる原料溶液を基板に塗布し、熱処理を施して超電導層を形成する手法。従来の気相法のように高価な原料や熱源、真空チャンバーを使用しないため、低コストで超電導層を形成できる。

■溶液塗布熱分解法の概要
(図:産総研のニュースリリースより)
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