PIDの発生メカニズム
(出所:岐阜大学)
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 岐阜大学は3月8日、太陽光パネルに起こる「電圧誘起劣化(PID:Potential Induced Degradation)」を、簡便・低コストで抑制する方法を開発したと発表した。

 PIDとは、P型半導体タイプの結晶シリコン系太陽光パネルの発電能力が短期的に大幅に劣化する現象で、国内外の太陽光発電所で、不具合例が報告されている。

 今回の対策手法は、太陽光パネルの生産工程におけるPID抑制加工のほか、設置済みの太陽光発電施設におけるPID抑制対策としても利用できるという。

 PIDは、太陽光パネルのフレームまたはカバーガラスと太陽電池セル(発電素子)の電極の間に、何らかの原因によって高い電圧が発生し、セルの電圧がマイナスの場合にカバーガラスに含まれるナトリウム(Na)がセル内部に移動するために発生するとされる。温度・湿度・電圧などの条件が影響していると考えられるが、Naの移動過程の詳細は分かっていない。

 近年、PIDの発生メカニズムとして、セル表面の反射防止膜(ARC:Anti-Reflection Coating)に高い電圧が加わることが劣化に大きく関係すると議論されている。今回の研究では、ARCに高い電圧が加わることを防ぐため、液体ガラスで作成したガラス層を高抵抗層として太陽光パネルに挿入した。ガラス層は可能な限り石英に近い組成が好ましいとした。

 カバーガラスとセルと包む封止材(EVA)の間にガラス層を挿入し、太陽光パネルに短時間で高い電圧をかけてPIDの状態にする試験(PID試験)を行った。その結果、ガラス層がない場合は大きく劣化したのに対し、ガラス層を挿入した場合はPID発生を遅延させる効果が見られた。また、ガラス層をカバーガラスの表面に作製した場合でも、ある程度のPID抑制効果が見られた。

PID試験による電圧電流特性の変化
(a)ガラス層がない場合は大幅に劣化する、(b)カバーガラスとEVAの間にガラス層を形成した場合は劣化を抑えた、(c)カバーガラス表面にガラス層を形成した場合はある程度の劣化抑制効果が確認された(出所:岐阜大学)
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 電解高度分布のシミュレーション結果では、ガラス層がない場合はカバーガラス、EVA、ARCの電界強度が強くなっていた。その一方、ガラス層を挿入した場合は、ガラス層に電解分布が集中しておりカバーガラス、EVA、ARCの電界強度は低いままだった。ガラス層をカバーガラス表面に形成した場合も、同様の結果が確認できた。

電界強度分布のシミュレーション結果
(a)ガラス層がない場合はカバーガラス、EVA、ARCの電界強度が高くなる、(b)ガラス層がある場合はガラス層に電解分布が集中しカバーガラス、EVA、ARCの電界強度は低いままになる(出所:岐阜大学)
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 今回開発したPID抑制技術は、太陽光パネルの部材や構造を大きく変えずに導入できるという。高抵抗層形成材料として液体ガラスを用いることから、多様な形状や大面積の部材への導入が容易で、設置済みパネルの表面に塗布することにより、後付けでも導入できるとしている。なお、今回の研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトの一環で実施した。