スズドープ酸化インジウムナノ粒子の電子顕微鏡像
(出所:京都大学)
[画像のクリックで拡大表示]
スズドープ酸化インジウムナノ粒子を塗布したガラス基板
(出所:京都大学)
[画像のクリックで拡大表示]

 京都大学、豊田工業大学、徳島大学、産業技術総合研究所(産総研)らの共同研究グループは2月13日、赤外光を電気や信号に変換できる無色透明な材料を開発したと発表した。目に見えない太陽電池、通信機器、光学センサーなどの最先端デバイスの開発への応用が期待される。

 光を信号やエネルギーに変換できる無色透明な材料は、これまでも紫外域の光で実例があった。しかし、紫外光は通信、エネルギー変換に向いていないため、長波長で不可視の光である赤外光を電気や信号に変換できる材料の開発が強く求められていた。

 研究グループは今回、赤外域に局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)を示す無機ナノ粒子を用いた。赤外域にLSPRを持ち、ドーピング量を制御することで吸収波長を制御できるスズドープ酸化インジウムナノ粒子を光捕集材、酸化スズを電子アクセプターとして利用することで、赤外光による電子移動と透明性の両立を目指した。

 ガラス基板上に製膜したスズドープ酸化インジウムナノ粒子は、可視域の透過率が95%と赤外域に強い吸収を持つ無色透明な材料になった。スズドープ酸化インジウムナノ粒子を電子アクセプターである酸化物担体(酸化チタン、酸化スズ、シリカ)に担持した後、焼結により酸化物担体との結合を形成した。

 波長1700nmのレーザーを用いて、スズドープ酸化インジウムナノ粒子のLSPRを励起し、酸化物の導電帯の電子に由来する吸収を観察した結果、酸化チタン、酸化スズで特徴的な吸収スペクトルを赤外域に観測することに成功した。これは、LSPRの励起によってスズドープ酸化インジウムナノ粒子から酸化チタン、酸化スズにホットキャリアが注入されていることを示す。

 また、吸収スペクトルの強度から見積もった電荷注入効率は、酸化チタンに対しては0.11%だったが、酸化スズに対しては33%と大幅な増大が見られた。これは、アクセプターとして働く酸化物担体の伝導帯の位置が、電荷注入効率を左右する重要な要素であることを示す。スズのドープ量を変化させてLSPRを4000nm近傍まで長波長側にシフトさせた場合も、LSPRの励起による電荷分離を観測した。

 さらに、スズドープ酸化インジウムナノ粒子を担持した酸化スズをタングステン基板上に焼結担持して光電極を作成し、赤外光照射下での光電流を測定した結果、LSPRを再現する形で光電流のアクションスペクトルが得られた。これは、LSPRを励起することで生じたホットキャリアが酸化スズに注入されることを示す。この光電極は中赤外域近傍の2500nm付近までの赤外光の照射に応答した。

 光を信号やエネルギーに変換できる目に見えない材料は、景観やデザイン性を損なわず社会のあらゆるところに設置できる通信システム、透明なセンサー、エネルギー供給デバイスを実現するキーテクノロジーとして注目される。今後、電荷注入効率の更なる性能向上とともに、透明な電子デバイスへの応用を目指し、材料開発を進めていく。