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ミドリムシの油生産時の反応を解明、バイオ燃料に貢献

2019/02/14 14:19
工藤宗介=技術ライター
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 ユーグレナ、理化学研究所、筑波大学らの研究チームは1月30日、ミドリムシ(微細藻類ユーグレナ)の油脂生産時における硫黄化合物の代謝変化の実態を解明したと発表した。ミドリムシの油脂生産性の向上や臭いの発生を抑制する技術の開発など、高効率バイオ燃料の研究が加速すると期待される。

 ミドリムシは豊富な栄養素を含むと同時に、特定条件下で油脂を高い割合で蓄積することが知られている。これまでの研究により、周囲に酸素のない条件下で細胞内に蓄積したパラミロンを分解してエネルギーを獲得し、その反応で不要なものをワックスエステルという油脂の形で蓄積(ワックスエステル発酵)することが明らかになっている。

 ミドリムシのワックスエステルは、バイオ燃料の原料に適しているとされることから、バイオ燃料生産への利用が検討され技術開発が進んでいる。一方、油脂が蓄積する際、同時に硫黄化合物の臭いがミドリムシから発生することが経験的に知られていたが、この現象は深く追究されていなかった。

 研究チームは今回、ミドリムシに油脂を作らせた後、ミドリムシと培養液上清を別々に回収し、それぞれに含まれる硫黄化合物をサルファーインデックスで分析した。サルファーインデックスは、サンプル中の硫黄化合物についてメタボローム解析を行い、各硫黄化合物の量を網羅的に定量化する技術。その結果、培養液上清に硫化水素が含まれていることが確認され、ワックスエステル発酵における臭いの発生原因であることが分かった。

ミドリムシの油脂生産時に発生する硫黄化合物の比較解析の概要
(出所:ユーグレナ)
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 また、細胞内に含まれる硫黄化合物量の変化を調べた結果、油脂の生産に対応して細胞内のシステインやメチオニンなどの含硫アミノ酸が増え、同時にグルタチオンやタンパク質など硫黄を含む化合物が減少していることが分かった。グルタチオンやタンパク質が分解されて含硫アミノ酸が増えるという変化が細胞内で起こり、この含硫アミノ酸をエネルギー獲得のために分解した際に硫化水素が発生するという仕組みが示唆された。

 さらに、ミドリムシによる油脂生産時にグルタチオンの分解を促進させる原因を解析した結果、γ-グルタミルトランスペプチダーゼというグルタチオンの分解に寄与する酵素の量が変わらないのに対し、酵母などで発見された別の経路のグルタチオン分解酵素Dug1p、Dug2p、Dug3pに相当する酵素の量が増えていることが明らかになった。これにより、ミドリムシが油脂生産する際にDug1p、Dug2p、Dug3pからなる分解経路の強化によりグルタチオンの分解が促進していることが示唆された。

 今回の研究成果により、油脂生産における臭いの発生を抑える技術の開発が可能になり、大規模にバイオ燃料を生産する際の環境への臭いの放出を予防するとともに、残渣に含まれるタンパク質を増やすことで飼料などへの利用価値向上が期待できる。また、ワックスエステル発酵における油脂の生産性を上げるための方策の検討が可能になるとしている。

今回の研究で発見された現象
(出所:ユーグレナ)
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