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太陽光の変換効率5.5%、有用な人工光合成に道

2019/01/29 10:42
工藤宗介=技術ライター
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今回開発した赤色透明な酸素生成光電極
(出所:NEDO)
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今回開発した酸素生成光電極と水素生成光電極から構成される2段階タンデムセルの模式図
(出所:NEDO)
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 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は、東京大学と共同で、窒化タンタル(Ta3N5)光触媒を用いて、太陽光によって水を高効率に分解できる赤色透明な酸素生成光電極を開発した。水の分解反応による水素/酸素製造において、太陽光エネルギー変換効率5.5%を達成した。1月25日に発表した。

 窒化タンタルを成膜する導電性基板に透明で低抵抗、耐熱性に優れたGaN/Al2O3を適用するとともに、スパッタリングによる成膜条件を最適化し、温和な条件での窒化により赤色透明な酸素生成光電極を開発した。この電極を電解液に浸して疑似太陽光を照射し、外部電源から電位を印加すると、光電極上で水の酸化反応が起こって酸素が生成されるという。

 水の酸化反応は理論的には1.23V vs. RHEよりも高い電位で起こるが、光のエネルギーを利用することでより低い電位から水の酸化反応が発生して酸素を生成する。今回開発した電極では、0.6V vs. RHE近辺から水の酸化反応が起こり、1.23V vs. RHEで6.3mA cm-2の光電流を発生し、疑似太陽光の照射下における窒化タンタル光触媒の理論最大電流値の50%に迫る性能を達成した。

 また、透過吸収スペクトルの測定結果から、600nmよりも長波長側の光透過率は70%以上あることが分かった。この電極を1段目(前面)、CuInSe2(1100nmまで光吸収可能)をベースとした水素生成光電極を2段目(背面)に配置した2段型タンデムセルを作製し、疑似太陽光の照射下における水の全分解反応を検討した結果、太陽光を用いた水の分解反応による水素/酸素製造において、照射開始15分後で5.5%の太陽光エネルギー変換効率を維持できた。

 今回の研究成果は、エネルギ=変換技術としての人工光合成の有用性を実証したもので、2018年12月12日(欧州標準時)に欧州科学誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン速報版で公開された。今後は、今回開発した電極の反応効率と長期安定性をさらに向上させるとともに、実用化に向けた水素製造デバイスおよびモジュール構造の最適化を進め、2021年度末までに目標とする太陽光エネルギー変換効率10%の達成を目指す。

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