「点突然変異+DNAメチル化異常」でリスク診断

 第2に、点突然変異やDNAメチル化異常の上昇はライフスタイルを反映することが分かった。食道がんでは喫煙や飲酒、そして今回の共同研究を行った台湾ではビンロウの使用がその誘発要因になることが知られている。喫煙や飲酒、ビンロウは突然変異とDNAメチル化異常の両者を誘発することから、点突然変異とDNAメチル化異常が同程度に重要という食道での結果とよく合う。

図2●発がん誘発要因と点突然変異とDNAメチル化異常の相対的重要度(出所:国立がん研究センター)
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 胃がんでは、その誘発要因としてピロリ菌感染歴が知られている。ピロリ菌感染は胃粘膜に強い慢性炎症を誘発し、結果としてDNAメチル化異常を強力に誘発する。このことは、胃がんではDNAメチル化異常が重要という今回の結果とよく合う(図2)。研究グループは現在、ピロリ菌除菌後の健康人を対象にしたDNAメチル化異常の測定による胃がんリスク診断の臨床研究を進めており、5年後の実用化を目指している。

 第3に、点突然変異とDNAメチル化異常の蓄積を組み合わせることで正確なリスク診断につながる。これまでは、正常な組織に蓄積したDNAメチル化異常のみ測定可能だったが、点突然変異と組み合わせることで発がんリスクの予測精度が高まると考えられる。

表1●ライフスタイル因子に点突然変異や DNAメチル化異常の蓄積を追加することによる予測能向上(出所:国立がん研究センター)
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 実際、食道がんでは、点突然変異とDNAメチル化異常を組み合わせると、発がんリスク予測の感度・特異度が非常に高くなった。一方、胃がんではDNAメチル化異常のみの場合でも発がんリスク予測の感度・特異度は高く、点突然変異を追加する効果は不明確だった(表1)。すなわち、食道がんの予防には禁煙や減酒による点突然変異とDNAメチル化異常両者の抑制が重要であり、胃がん予防ではDNAメチル化異常を誘発するピロリ菌の感染防止と除菌が重要といえる。