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名大、シリコン太陽電池で新材料、高効率化に期待

「酸化チタン極薄膜」を開発し、構造を解明

2019/01/08 14:03
工藤宗介=技術ライター
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今回開発した酸化チタン極の模式図と、加熱前後の電子顕微鏡像およびキャリア寿命
(出所:名古屋大学)
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 名古屋大学は2018年12月20日、太陽電池への応用に有望な電気的特性を示す酸化チタンの極めて薄い膜を開発したと発表した。さらに、極薄膜の断面を原子レベルで観察することで酸化チタンの詳細な構造を明らかにし、高性能な新材料を作製するための構造設計の指針を示した。

 太陽電池の内部で光によって生成したキャリア(電子、正孔)を収集する材料として、これまでに水素化アモルファスシリコンと結晶シリコンとのヘテロ接合型太陽電池が報告されている。水素化アモルファスシリコンを堆積した結晶シリコンはキャリア寿命が長く、高いパッシベーション(不動態)性能を示す一方、水素化アモルファスシリコンによる光吸収やヘテロ界面における電子構造の不整合などが更なる高性能化への課題となっていた。

 これらの課題を解決する可能性のある新材料として、電子総体積法を用いて結晶シリコン上に製膜した酸化チタン薄膜が優れた特性を示すことから注目されている。しかし、高いパッシベーション性能を示す酸化チタンが得られる構造が分からず、新規ヘテロ接合材料の開発指針が不十分だった。

 研究チームは今回、さまざまな条件で酸化処理を施した単結晶のシリコン基板に原子層堆積装置を用いて3nmの酸化チタン極薄膜を製膜し、その後の熱処理によって高いパッシベーション性能を発現させることに成功した。さらに、透過型電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光法を組み合わせることで、熱処理前後の試料を使い、断面の詳細構造を明らかにした。

 酸化チタン極薄膜のヘテロ界面の微小な領域の構造を観察した結果、熱処理前のシリコン酸化膜は化学量論比から外れた密度の低い膜だったのが、熱処理後にはチタン原子が含まれた化学量論比に近く密度の高い膜になったことが明らかになった。さらに、酸化チタンと酸化シリコンの間には両者が混在した混合膜ができていることが分かり、チタンを含んだ化学量論比に近く密度の高い緻密なシリコン酸化膜が高いパッシベーション性能に重要であることが判明した。

 今回の研究成果により、結晶シリコン系太陽電池の更なる高効率化が期待できる。また、密度の低いシリコン酸化膜を事前に形成することで優れた電気特性が得られることが分かったことから、今後はより疎なシリコン酸化膜を形成することで更なる性能向上を目指す。研究グループでは、酸化チタン以外の新規ヘテロ接合材料の開発も並行して進めており、普遍的な高性能化モデルの構築にも貢献したいと説明している。

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