太陽光発電市場――2019年の展望~市場規模、政策、ファイナンスの動向

「入札」拡大で大規模案件に正念場、夏以降、「卒FIT」商戦が本格化

2019/01/04 19:07
金子憲治=メガソーラービジネス編集長

経産省の「決意」が見えた2018年

 国内太陽光発電業界にとって2018年は、経済産業省の“強い決意”が実行に移されたという意味で、固定価格買取制度(FIT)の運用上、転機となった年と言える。それは、上期・入札制度の上限価格に15.50円/kWhを設定して、結果的に「落札者ゼロ」となったこと。そして、「長期未稼働案件」への新たな措置により、FIT開始3年目までに認定された未着工案件について、事実上、買取価格を切り下げたことだ。

 これらの政策対応は、これまで経産省と太陽光デベロッパー(開発企業)との間で維持されていた、暗黙の“信頼関係”を裏切るものでもあった。

 上期・入札で非公開の形で設定された「15.50円/kWh」は、FIT開始以来、3~4円程度の下げ幅で推移してきた買取価格・算定の流れのなかで、「段差」のあるものだった。入札対象案件となった出力2MW以上の大規模案件のデベロッパーにとっては、2017年度の21円/kWhから、いきなり15.5円/kWh以下となり、5.5円以上の引き下げを求められた(図1)。

図1●太陽光の第3回入札(平成30年度下期)結果
(出所:一般社団法人・低炭素投資促進機構)
クリックすると拡大した画像が開きます

 また、長期未稼働案件への措置は、期限までに必要な手続きが済まなければ、買取価格の引き下げとなる。法令で決めた買取価格を事実上、遡及的に変更するもので、法律不遡及の原則からは、まさに「想定外」のことであった。経産省は、訴訟リスクやFIT制度への不信感を高める“禁じ手”を敢えて実施したとも言える。

 こうした経産省の「決意」の背景には、FIT賦課金による電気代上昇への産業界などからの強い批判、そして、世界的に見ると依然、高コストにある国内の太陽光発電に対し、エネルギー政策担当者としての“焦り”がある。

 一方で、太陽光の認定量が積み上がり、政府の掲げたエネルギーミックス(2030年のあるべき電源構成)の想定する太陽光の導入量・64GW(構成比7%)の達成も見えてきた。2018年に示した経産省の「決意」は、「世界的に見てあまりにコストの高い太陽光は今後、これ以上、認定しない」とのメッセージとも言える。その政策的な表れが、入札制度の対象拡大と、募集枠の引き締め、上限価格の低め設定となった。

 2019年以降の太陽光発電の市場動向を占う場合、まずは、こうした太陽光発電を巡る政策担当者の「意識変化」を念頭に置く必要がある。

2018年度に「駆け込み認定」も

 経産省による太陽光の“引き締め政策”は、新規認定量の減少となって表れるものの、ここ数年の導入量に関しては、逆に「活況」とも言える状況をもたらしそうだ。なぜ、そうなるのかは、後述する。

 まず、統計データの公表されている2017年度(2017年4月~2018年3月)の国内太陽光の市場規模を推定してみる。公式の統計としては、経産省の太陽光発電導入量・5.43GWと太陽光発電協会(JPEA)の太陽電池出荷統計・5.24GW、日本電機工業会(JEMA)の太陽光発電用パワーコンディショナー(PCS)出荷動向量調査・5.48GWの3つがある(図2)(図3)。

図2●固定価格買取制度(FIT)による年度別の太陽光・導入量(単位:kW)
(出所:経産省の公表値を基に日経BP作成)
クリックすると拡大した画像が開きます
図3●国内における太陽光パネルの出荷量推移
(出所:JPEA)
クリックすると拡大した画像が開きます

 このうち経産省の5.43GWとJEMAの5.48GWは連系出力(交流)ベース、JPEAの5.24GWは太陽光パネル(直流)ベースの出力となる。

 経産省の数値は、FITを利用して連系した案件なので、屋根上などここ数年増えている全量を自家消費する案件は含まれない。また、JEMAの統計には、比較的シェアの高い中国ファーウェイ、仏シュナイダーエレクトリックなど一部の主要海外メーカーが含まれていない。従って、両方の値とも実際よりもやや小さくなる。大雑把な推計では、交流ベースでは6~7GW程度の規模になると見られる。これにPCSの定格出力を超える太陽光パネルを積み増す「過積載」の比率が20%と仮定すれば、直流ベースでは7~8GWと推察できる。

 この数値(7~8GW)と、もともと直流ベースであるJPEAの数値(5.24GW)が合わないのは、JPEAの調査対象企業のカバー率が70~80%に留まると見られるためで、それを補正すると、やはり7GW程度になり、ほぼ一致する。

 同様の考え方で推定した2014年度の直流ベースの市場規模は11~12GW、2015年度の規模は10~11GW、2016年度は8~9GWだったので、太陽光パネル市場は、2014年度をピークにここ数年、年度ごとに1GW程度ずつ縮小していることがわかる。

 ただ、今年度(2018年度)は、やや盛り返し、再び8~9GWに拡大する可能性が高い。2018年9月のデータまで公表しているJPEAの出荷統計を見ると、2018年4~6月期は前年同期比を下回ったものの、同年7~9月期は約1.37GWで前年同期比約7%増となった。

 もともと2017年度は、新規導入が進みにくい環境にあった。改正FITに移行した年で、事業用低圧案件を中心に経産省の認定作業が大幅に遅れて着工できない案件が続出した。加えて、「事後的過積載」が認められた最後の年だったため、太陽光関連企業が「増設ビジネス」に経営リソースを割き、新設着工が後回しになった面もある。

2018年度上期の「契約申込」は倍増

 一方、2018年度は、「駆け込み認定」が予測される。というのは、経産省は早くから2019年度に入札制度の対象を事業用太陽光全体に広げる方向性を示しており、入札に移行した場合、第2回・3回入札の上限価格である「15.50円/kWh」以下になることが確実だからだ。最終的に2019年度に入札制に移行するには、「500kW以上」と決まったものの、入札の「上限価格15.50円/kWh」は、入札対象以外の買取価格も同レベルに引き下げられることを予想させ、10kW以上の事業用太陽光全体で「駆け込み認定」が起きている可能性が高い。

 2018年度に新規開発量が増加傾向にあるのは、電力広域的運用推進機関が4半期に1度、公表する「発電設備等系統アクセス業務に係る情報の取りまとめ」を見ても明らかだ。これは、500kW以上の電源を対象に電力系統へのアクセス状況(接続検討、接続契約申込)の件数と容量を電源別、エリア別に集計したもの。

 それによると、2018年4~9月の年度半期における太陽光の契約申込は3.568GWで、前年同期と比べて約2.5倍も増え、上期だけで2017年度を大幅に超えている。これは500kW以上の太陽光なので、500kW未満を含めれば、年度半期で直流ベース5GW程度の契約申込になると推定される。2018年度の認定に間に合わせるため、下期には減少していくと見られるが、住宅用も含め通期で10GW近い契約申込になる可能性もある(図4)(図5)。

図4●上半期ごとのアクセス業務の推移
(出所:電力広域的運用推進機関の公表値を基に日経BP作成)
クリックすると拡大した画像が開きます
図5●年度別のアクセス業務の推移
(出所:電力広域的運用推進機関の公表値を基に日経BP作成)
クリックすると拡大した画像が開きます

 契約申込が必ずしも認定取得にならないものの、連系協議を経て工事費負担金の額を把握しているだけに、認定に至る可能性は高い。そうなると2018年度通期で8~9GW程度の交流ベースの認定となり、これは直流ベースで10GWを超える規模になる。

 「駆け込み認定」が本格的に新規導入の増加として顕在化するのは、2019年度になるが、工期の短い事業用低圧案件の一部は2018年度下期に完工して稼働する案件も出てくる。

市場規模は8~10GWに拡大

 2019年度以降に太陽光の「活況」が起きるのは、2018年度の「駆け込み認定」案件の竣工に加え、2017年度の「改正FIT移行」と2018年度の「未稼働案件への措置」によって設定された「運転開始期限」付き未稼働案件の竣工が重なるからだ。

 FIT初期の未稼働案件がどの程度の規模なのかは、まだ確定していない。経産省は2018年11月に、2018年3月時点の太陽光の認定量を75.8GW、導入量を44.5GWと公表している(図6)。この数字を差し引きすると未稼働案件は31.3GWにある(いずれも交流ベース)。

図6●太陽光発電の認定量と導入量
(出所:経産省、2018年11月公表資料)
クリックすると拡大した画像が開きます

 ただ、75.8GWの認定量のなかには、改正FIT移行時に経過措置が適用された2017年4月以降の失効分(住宅用)と、未稼働案件への措置で事業開発を断念する案件を含んでいる。これらの分は11~12GW程度になると見られ、仮に半分、5~6GWが失効または断念となると仮定すると、総認定量は約70GWとなり、未稼働分は約25GWになる。

 この25GWのうち、運転開始期限の付いた案件が期限前後の稼働を目指して、2019~21年に続々と完工することになる。そうなると、この分だけで交流ベースで年間5~6GW、2018年度の駆け込み認定の8GWが2~3年で稼働すると仮定すると、2019~21年度には、毎年度交流ベースで7~8GW、直流ベースで8~10GWの市場規模となる可能性がある。

「FIT抜本見直し」が始まる

 一方で、2019年度の新規認定量については、大幅な減少が避けられない。入札対象の拡大と募集枠の設定で、同年度の500kW以上の認定量は、「最大750MW」となるため、仮に住宅用と500kW未満の事業用を2017年度実績(約2.5GW)、2016年度実績(約3.2GW)の平均(2.85GW)と仮定すると、太陽光全体の認定量は交流ベースで4GW弱、直流ベースで5GW程度に留まることになる。

 そもそも入札対象が拡大する2019年度は、2018年度の「駆け込み認定」の反動で、応募容量が低調になる可能性もあり、そうなると2020年度における入札の募集容量の設定も低めに抑えられるという「悪循環」になる。実は、2019年度の入札募集枠が「750MW」に抑えられたのも、改正FIT移行前の2016年度に「駆け込み」が起き、その反動で2017年度の認定が500kW以上で742MWと低調になり、それらを参考に枠を決めたからだ(図7)。

図7●太陽光発電の容量別・年度別の認定量
(出所:経産省、2018年12月公表資料)
クリックすると拡大した画像が開きます

 そう考えると、「駆け込み」翌年となる2019年度の入札募集に、どの程度の案件(容量)と価格の札が入るかが、日本の太陽光市場を占う意味で大きな意味を持ちそうだ。

 ただ、2020年度以降の動向に関しては、FIT制度の抜本見直しを「2020年度末」に控えているため、不透明感が大きい。見直しに向けた議論は、2019年度には始まる見込みで、2020年度の制度運用もその討議内容の影響を受けそうだ。また、2020年度には、「第6次エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論が始まることが予想され、エネルギー政策全体の中での再エネの位置づけを巡っても国民的な議論が活発化することが予想される。

夏以降、「卒FIT」商戦が本格化

 このほか、2019年度の注目点は、11月にFITの買取期間の終了する住宅用太陽光、いわゆる「卒FIT」が出てくることだ。まず2019年度には53万件、2020年度には20万件が「FIT卒業」となる(図8)。

図8●固定価格買取制度(FIT)の買取期間が終了する件数
(出所:経産省)
クリックすると拡大した画像が開きます

 小口でかつ変動する住宅太陽光の余剰電力の価値を巡っては評価が分かれるが、新電力の中には、期間限定ながら10円/kWhでの買い取り表明があり、2018年内に旧一般電気事業者の全社が買い取りの方針を示した。

 「卒FIT」商戦を巡っては、現在、余剰買取を行っている旧一般電気事業者が有利なことから、経産省の審議会で、2019年6月までに旧一般電気事業者が具体的な買取メニューを示し、それを踏まえたうえで新電力が買取メニューを出すことが決まっている。

 JPEAの増川武昭事務局長は、「住宅太陽光の電気は12円/kWh程度の価値は十分にある」としており、買取単価を巡る駆け引きは、この辺りがめどになる可能性がある。

 仮に買取価格が高めになった場合、もう1つのオプションである「家庭用蓄電池による全量自家消費への移行」の経済性が低下することになる。

 「卒FIT」商戦では、新電力が買取価格を提示し始める7月以降が、蓄電池販売も含め、本格的な顧客争奪戦になりそうだ。

1500Vシステムが普及へ

 2018年の技術・運営面での大きなトピックスは、九州電力が本土で初めて出力抑制(出力制御)を実施したことだ。2019年には、九電に続き、四国電力と沖縄電力が太陽光発電に対する出力抑制に踏み切る可能性が高い。中国電力と東北電力も準備を進めているが、実際に踏み切るのは2020年からになりそうだ。

 九電の出力抑制指令によって、週末に現地で資格保持者が停止する手間とコストが改めて認識され、今後、後付けで遠隔制御システムの導入が進みそうだ。

 また、運営面では、バイパスダイオードが働いてセル(発電素子)の3分の1が発電しなくなる「クラスター断線」を発見する検査技術が進歩し、O&M(運営・保守)に組み込むサイトが一般化している。接続箱からインピーダンスを測定する手法やドローン(無人小型飛行体)を使う方法などを採用するケースが多い。

 パネル洗浄に関しては、洗浄機器の進歩などでサービス料金が低下したこともあり、汚れの激しいサイトによっては、洗浄による発電量の増加で、洗浄費用を早期に取り戻せるケースもあり、徐々に採用が増えている。

 システム設計の技術面に関しては、直流回路の1500V仕様を採用するサイトがさらに増えそうだ。PCSに加え、1500Vに対応した国内メーカー製パネルや、検査機器が製品化され始めたことで、国産製品での1500V設計と稼働後の検査が可能になってきた。

図9●岡山県で建設中の1500Vシステムのメガソーラー。1500V対応のトリナ・ソーラー製パネルと東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製PCSを採用
(出所:パシフィコ・エナジー)
クリックすると拡大した画像が開きます

 一方、太陽光を巡る金融手法に関しては、ここにきて、「グリーンボンド」による資金調達が相次いでいる。「グリーンボンド」は、環境負荷を削減するプロジェクトに対して資金を募る債券で、ESG投資に熱心な金融機関や機関投資家が投資する。環境負荷の削減を担保するために外部機関がプロジェクト内容をレビューすることが一般的だ。

 国内でも、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、大和証券グループなど金融機関のほか、オリエントコーポレーションや芙蓉総合リース、東京センチュリーなどのノンバンク、大林組、丸井グループ、ANAホールディングスなどの事業会社が発行し、太陽光関連へのプロジェクトに活用する資金を調達している。

 世界的に見ると、欧州洋上風力などでは、プロジェクトファイナンスからグリーンボンドに移行することで、より資金調達コストを下げる動きもあり、国内でもこうした動きが活発することが予想される。