認知症患者への「パロ」の効果、国内外の事例

産総研の柴田氏が講演

2015/12/17 11:01
宮川 泰明=スプール

 日本画像医療システム工業会(JIRA)は2015年12月9日、「精神疾患(認知症、うつ病)の予防と診断と治療-画像診断とロボット技術の応用-」と題した研究会を開催。登壇した産業技術総合研究所(産総研) 人間情報研究部門上級主任研究員の柴田崇徳氏は「ニューロロジカル・セラピー用ロボット」として、あざらし型ロボット「パロ」を紹介した。

パロ
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 パロは一見、ただのぬいぐるみだが、多数のセンサーを搭載し、外部からの刺激に反応、学習して動作するロボットだ。例えば、名前を呼び続けると、事前に登録していた名前でなくても反応を返すようになるという。全長55cm、重さ2.5kgと人間の赤ちゃんに近い大きさ。最初の製品は2004年に発売、改良を重ねて最新モデルは9世代目だ。

 このロボットは認知症患者のケアに役立つと語る。例えば、認知症の人が触れ合いを通して過去の子育てや飼っていたペットを思い出す刺激になるという。元々、動物を利用したアニマルセラピーに一定の効果があることは知られていた。しかし生身の動物を利用すると噛み付かれて怪我をしたり、人畜感染症にかかったりする恐れがあるなど、その動物を管理する負担が大きいという問題があった。セラピー向けのトレーニングや日々の世話などのコストもかかる。そのため実際に導入している例は多くないという。そこでより管理しやすいロボットでの代替に注目した。

 パロは米国のFDA(食品医薬品局)で医療機器として認定を受けている。ドイツではパロを使用した訪問介護が健康保険の対象になっており、デンマークでは国のプロジェクトに採用された結果80%の自治体で導入されているなど、海外でも多数の採用例がある。現在は国内外で4000体が稼働しているという。

 パロを導入した施設では、叫ぶ、暴れる、徘徊するといった入居者の問題行動が大幅に減ったという。従来は問題行動を抑えるために抗精神病薬を使っており、効果が現れるまで数十分かかっていた上にうまく効かないこともあった。副作用で車いすに座ったまま眠ってしまうこともあり、落ちないようにスタッフが付き沿う必要もあった。パロを利用すると早ければ数分で効果が現れ、副作用もない。就寝時には睡眠導入剤が必要だった人や夜間に起きてしまう人もぐっすり眠れるようになったとした。

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