日本では技術開発が停滞している原子力発電だが、世界では安全性を高めた新方式の原子炉開発が進む。その1つが溶融塩原子炉だ。2017年12月には、同タイプの原子炉を開発するカナダELYSIUM Industries社Co-founder/Chief Technology OfficerのEd Pheil氏が来日し、自由民主党の勉強会で講演するなど、日本でも注目され始めている*1

*1 2017年12月6日に開催された務調査会の「資源・エネルギー戦略調査会新型エネルギー検討委員会勉強会」。

メルトダウンがない原子炉

 溶融塩原子炉は、現行の改良型軽水炉の次の世代となる第4世代原子炉とされる。1次冷却剤に液体溶融塩を用い、その溶融塩に燃料となる核分裂性物質を混合させるのが特徴だ。

 基本的な原理は次のようなもの。炉心は黒鉛を反射材とするトンネルがあり、そこにポンプで核燃料を混ぜた溶融塩を送り込む。すると、黒鉛が中性子を反射して核分裂の連鎖反応が進み熱が生じる。高温になった溶融塩は外部の熱交換器において2次冷却剤(水)と熱交換し、そこで生成された蒸気で発電タービンを回す。冷やされた溶融塩は、再び炉に戻るという仕組みだ(図1)。

図1 溶融塩炉の基本構成
核分裂性物質(核燃料)を混合させた溶融塩をポンプで炉心に送ると、炉心の黒鉛反射材により核分裂の連鎖反応が起こる。その熱により2次冷却系の水を蒸気にして発電タービンを回す。炉の温度が上がり過ぎたり、制御電源を喪失したりすると、フリーズバルブ内の固体溶融塩が自然に溶解してバルブが開き、冷却系の溶融塩はドレンタンクに排出されて固まる。
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 溶融塩原子炉が注目されているのは、その安全性の高さにある。軽水炉のような暴走やメルトダウンが原理的に起こらないからだ。人為的な制御棒の出し入れによって核分裂反応を制御する軽水炉と異なり、万が一電源や冷却機能を喪失しても、数百度の溶融塩は黒鉛トンネルの外に出れば自然に空冷されて核分裂反応は収束する。

 加えて、炉の真下を通る1次冷却系には「フリーズバルブ」と呼ぶシャットダウン機構を備える。フリーズバルブは、金属パイプの中に冷えた固体溶融塩を詰めたもの。通常運転時は閉じているが、核反応が過度に進んだり、電源を喪失したりして1次冷却系の液体溶融塩の温度が上がり過ぎると、同バルブ内の固体溶融塩が溶解。バルブが開いて循環系内の溶融塩が重力によって炉心直下のドレンタンクに排出される。排出された溶融塩は、自然空冷され凝固する。つまり、異常があれば自然に機能停止する。

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