錯視や錯覚は、人間の脳が情報を処理する上で避けて通れないもの。見る角度によって全く異なった形に見える錯視図形の研究によって、そのことがはっきりと分かってきた。人間の限界が分かると同時に、それを超える方法も明らかになる。自動運転は人間による運転より優れたものになるだろう、と脳の長所も弱点も知る錯視研究の第一人者である杉原氏が断言する。

写真:栗原克己
[画像のクリックで拡大表示]

 隣り合わせに並んだ2枚の窓に、通るはずのない1本のまっすぐな棒が通る。円筒のはずが、別の角度からはとがった断面の柱に見える(写真)。そういった、明白な錯視が起こる立体を研究しています。

見る方向によって円柱の集まり(鏡の中)、または尖った 図形の集まりに見える図形。(写真:栗原克己)
[画像のクリックで拡大表示]

 錯視は、単なる勘違いだったり、起こったり起こらなかったりするものではなく、脳の働きによって常に生じるものです。錯視図形の多くは、特定の視点から見たときにのみ錯視が生じるため、別の角度から見れば本当の形状がどうなっているか分かります。しかし、本当の形状を知った後でも、特定の視点に戻ると必ず、脳が再び錯視を生じてしまうのです。

 目で見て得た画像から立体を読み取るときの脳での情報処理は、理性や知識に基づくものだと思われています。でも、実際は完全に自動化された処理で、理性は介入できません。本当の立体は違うと理性で分かっていても、脳はそれを無視して別の形を思い浮かべます。これは訓練や意志では変えられません。

 研究を通して、錯視が起こる視点の範囲がとても広い立体も見つけました。片目ではなく両目で見ても錯視が起こります。つまり、両眼立体視をもってしても錯視を防げないのです。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ものづくり」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は申し込み初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら