脚光を浴びているDNN(Deep Neural Network)の今後の課題が見えてきた。機械学習時に非常に多くのデータを必要とすることや、予測機能の弱さなどだ。多くの研究機関やメーカーがDNNの限界を超える「Beyond DNN」を目指して、脳型チップの開発を加速させ始めた。脳科学の知見に基づいた大胆な技術提案も相次いでいる。

 「脳型チップ」の開発例が急増している。2015年12月に開催された半導体素子の国際学会「2015 IEEE International Electron Devices Meeting(IEDM 2015)」では2セッションが脳型チップの発表に割り当てられ、17件超の論文が発表された。IEDMでは2012年ごろから毎年数件の発表があったが、IEDM 2015では一気に3~4倍に増えた。

脳型チップ=脳神経細胞(ニューロン)の活動を模した素子、そしてニューロン同士を接続し、スイッチやメモリーの役割を果たすシナプスの動きを模した素子を集積したIC。英語では、Neuromorphic chipと呼ばれる。

 急増の理由の1つは、米IBM社が脳型チップの実用化を視野に入れて開発し、2014年夏に発表した「TrueNorth」に刺激を受けたためとみられる(図1)1)。IEDM 2015で発表された論文の多くがTrueNorthの論文を真っ先に引用した。「TrueNorthの登場をきっかけに、数十年前にやめていた開発を、我々も再開した」(ある日本の大手サーバー機メーカー)という例もある。中国Tsinghua University(清華大学)は、脳型コンピューターの研究センターに、精密工学、電気工学、コンピューター科学、オートメーション、バイオメディカル、材料工学など各学部の専門家が参加する総力体制でTrueNorthに似た「Tianji(天機)Chip」を開発している(図1(b))。

天機=最高機密。中国でよく使われる表現「天機不可泄露(最高機密は開示するな)」にちなんだという。
図1 清華大学はTrueNorthを猛追
(a)は、IBM社が2014年に発表し、今も開発を続ける脳型チップ「TrueNorth」。最近は、ラックに搭載して規模を拡張できるよう、モジュール型サーバーのようなシステムを開発した。(b)は、中国の清華大学が総力を挙げて開発している「Tianji(天機)Chip」の概要。その構造は、IBM社のTrueNorthにかなり似ている。(図:(b)はIEDM 2015)
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