国や地域によって千差万別の交通事情に自動運転車は対応できるのか。広範囲での「レベル3」の実現に向けて、ドイツDaimler社が世界各地で実験車両を走らせている。日経Automotiveはオーストラリア・メルボルンでDaimler社のチームに合流し、自動運転開発の現場に密着した。

 メルボルンの道路をクルマで走っていると、LEDを光源に使った道路標識の多さが目に付いた〔図1(a)〕。制限速度は道路状況や天候などに応じて変わり、リアルタイムで標識に反映される。「LED標識を正確にカメラで認識できるかが、オーストラリアで自動運転を実現する上で重要なポイントの一つだ」。Daimler社Head of Active Safety and RatingsのChristoph von Hugo氏は訴える。

図1 地域ごとに違う道路事情にどう対応するか
(a)オーストラリアではLED光源を使った道路標識が広く普及している。高速に点滅するため、カメラによる認識が難しい場合がある。(b)メルボルン市内には、「フックターン」と呼ばれる二段階右折が必要な交差点がある。
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 標識を認識する上で課題となるのが、「LEDフリッカー」と呼ばれる現象への対応だ。LEDは人には認識できないほど高速に点滅している。LED消灯時に撮影してしまうと、標識の文字を正確に判別できなくなる。点滅周波数は、国や標識を供給するメーカーによってばらつきがある。

 自動運転車では、制限速度の情報を読み取って車両制御に反映させる必要がある。車載地図データにも制限速度の情報は持たせるが、先述の通り時々刻々と数字が変わる。Daimler社Communications Autonomous Driving & Intelligent DriveのBernhard Weidemann氏によると、「制限速度情報がカメラで読み取ったものと地図データで違った場合はカメラの数字を優先させる」という。

 カメラをはじめとするセンサーが外界を正確に認識し、車両を制御できているかを確かめるため、Daimler社は旗艦セダン「Sクラス」ベースの実験車両を用意した(図2)。ステレオカメラやミリ波レーダーは既存品だが、「未加工の生データを吸い上げるためケーブルをEthernetに変更した」(Weidemann氏)。

図2 センサーデータと道路情報を蓄積
車両が不自然な挙動をしたときや運転者が気になったシーンなどをトリガーに、前後30秒間のデータを収集できるようにしている。車内のモニターではリアルタイムにセンサーが補捉した障害物や道路などの情報を確認できる。
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 センサーデータは、急激な速度変化やステアリング操作をトリガーに、事象が起こった30秒間を自動で保存する。運転席に座る開発メンバーが気になった箇所も、手動で専用ボタンを押せば保存できる。センサーデータだけでなく、外界を撮影しているカメラのデータも同期させて蓄えておく。データ容量は30秒間で6Gバイトほど。データを収集・分析するソフトウエアはDaimler社の内製という。

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