「2020年代前半に実用化できるように全固体リチウム(Li)イオン電池を開発中」。2017年秋開催の「東京モーターショー」でトヨタ自動車はこう公言した。これまでも、ポストLiイオン電池の最有力候補とされてきた全固体Liイオン電池だが、いよいよその実用化が近付いてきた。そして、そうした同電池への期待の大きさを感じさせたのが、2017年11月開催の電池関係の学会「第58回電池討論会」である。全固体ナトリウム(Na)イオン電池も含む全固体電池のセッションが丸3日間実施された。

 全固体Liイオン電池の高エネルギー密度化で、将来技術として期待されているのが、正極材としての硫黄(S)や硫化リチウム(Li2S)の活用と、負極材としての金属Liやシリコン(Si)の活用である。今回の電池討論会でも、それらに関する研究が数多く発表された(表)。例えば、大阪府立大学教授の辰巳砂昌弘氏らのグループが発表したのが、正極活物質の硫黄に多孔質炭素「CNovel(クノーベル)」などを混ぜた正極複合材を使う全固体Liイオン電池。現状のLiイオン電池を凌駕するエネルギー密度の実現が期待できる。肝は、絶縁体の硫黄活物質を使っても正極の導電率を確保できるように、比表面積や細孔体積が大きな炭素であるCNovelを混ぜたこと。Liイオン伝導パスを形成する硫化物系の固体電解質Li3PS4と合わせて正極複合材とし、負極にはリチウム-インジウム(Li-In)合金を使う。

表 全固体Liイオン電池に関する発表の例
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 室温における正極活物質の質量当たりの可逆容量は、電流密度が1.3mA/cm2の場合で、初期サイクルが1200mAh/g、400サイクル後が1100mAh/g。正極中の硫黄の質量比が40%で電圧が1.3V程度であることを加味すると、正極の質量当たりのエネルギー密度は順に624、572mWh/g程度となる。セルにおける正極の質量比を仮に30%とすると、セルのエネルギー密度は187、172Wh/kgと現状のLiイオン電池に並ぶ。しかも全固体電池では、直列接続するセルの正極と負極の集電体を1枚で兼ねたりパッケージを簡素化したりできる。Liイオン電池のエネルギー密度を凌駕するポテンシャルを持つ。ただ、正極の膜厚を既存のLiイオン電池並みにできるかどうかは懸念材料。厚膜化が難しいと、実用化困難か実用化できてもエネルギー密度は下がる。

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