デンソーは2017年9月、愛知県日進市の先端技術研究所(旧基礎研究所)を報道陣に公開した。2030年までの長期的な視点に立った研究開発を担う。電動車両に欠かせないSiC(炭化ケイ素)や自動運転を見すえた人工知能(AI)、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)などの研究成果を見せた。

 同社は現在、国内6拠点で研究開発を進めている(図1)。このうち、先端技術研究所は「研究開発の総本山」(同社専務役員技術開発センター担当の加藤良文氏)と位置付ける。半導体クリーンルームや機械加工設備を備えており、自動車に搭載可能な試作品まで作れる点が特徴だ。人員は2017年7月時点で543人。研究者が66%、クリーンルームなどの作業者が34%を占める。

図1 デンソーの研究開発拠点
デンソーは現在、国内6拠点で研究開発を進めている。今回報道陣に公開した先端技術研究所は、SiCパワー半導体やAI、HMI、人間特性などの研究テーマを扱う。デンソーの資料を基に本誌が作成。
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 研究テーマはSiCパワー半導体やAI、HMIなど。すべての研究者が日進市にいるわけではなく、国内3拠点に分散している。実用化に近い半導体IP(Intellectual Property)やHMIを扱う研究者は愛知県刈谷市の本社拠点、ソフトやAIを担当する研究者は東京都渋谷区の拠点「デンソーアイティーラボラトリ」でそれぞれ活動している。

 同社がまず紹介したのが、SiCの結晶成長技術だ(図2)。SiCは電動車両のモーター制御に使うインバーターの電力損失をSiに比べて約1/5に減らせる次世代材料である。欠陥の少ない高品質なSiC結晶を作るため、独自の製造技術を開発している。

図2 高品質のSiC結晶を製造
SiCの粉末原料を2300℃以上の高温で加熱し、種結晶の上に高品質のSiC結晶を成長させる技術を開発している。直径150mm、厚さ20mmの結晶を成長させるのに100時間以上かかるという。装置の写真はデンソーが提供、ウエハーの写真は本誌が撮影。
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 同社はSiCの粉末原料を2300℃以上の高温で気化(昇華)させ、種結晶の上で再結晶化する「昇華法」と呼ぶ手法を採用する。再結晶化したSiCの中から欠陥の少ない部分を切り出して種結晶として利用する「RAF(Repeated A-Face)法」と呼ぶ技術を豊田中央研究所と共同開発した。この手法を使い、SiC結晶の欠陥密度を他社製の市販品と比べて1/4に低減できた。

 RAF法は種結晶を取り替える回数が多いほど、結晶欠陥を減らせるが、その分時間がかかる。例えば、直径150mm、厚さ20mmのSiC結晶を1回成長させるのに100時間(約4日間)かかる。このため、実用化するためには、結晶の品質とコストのバランスが取れる回数を見極める必要がある。

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