「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
開発部門のマネジャーです。部下の問題意識が低いことに危機感を覚えています。製品同士の競争が激化する一方、IoT(Internet of Things)化の進展で今後は競争環境まで大きく変化する可能性があります。ところが、部下からは従来と異なる新しい発想や提案が上がってくることはほとんどありません。部下の問題意識や危機意識を高める方法はありませんか。

編集部:「IoT化でゲームチェンジが起きる」とは、ある大手企業の研究開発担当役員の言葉です。IoTの導入で競争のルールや環境までガラリと変わる時代がやって来ることを予見し、危機感を覚えていました。管理者からすると、部下にはこうした変化をいち早く察知し、的確な行動を見せてほしいと思うのでしょうね。IoT化への対応に限らず、ほとんどの製品の競争が激しくなっているのですから、部下の危機意識や問題意識をより高めたいと悩む管理者は増えていると思います。トヨタ自動車ではどのように対応しているのでしょうか。

肌附氏― 以前(第13回)紹介した通り、トヨタ自動車には「崖っぷちの仕掛け」というものがあります。その名の通り、社員を崖っぷちに立たせ、自力で乗り越えざるを得ない環境に追い込む方法です。

 例えば、プロジェクトの各担当者に対して崖っぷちの仕掛けを施します。当然ですが、プロジェクトではそれぞれの担当者が自ら与えられた業務を完遂させなければ成功に導くことはできません。このとき、各担当者に「この業務は君に任せた。全て自分の責任で担当する業務を完結させなさい」と上司が命じるのです。

 業務を進めていくと、いろいろな壁にぶち当たるものです。中には、不可抗力による事故や外部企業のミスといった、自分では制御できないトラブルも起きることでしょう。しかし、こうしたトラブルがあったことを理由に部下が上司に「できません」と報告に来たとしても、「私は全て君の責任で完結せよと言ったはずだ」と、あえて突き放すのです。こうして部下に、「誰かや何かのせいにしても仕方がない。誰も助けてはくれない。石にかじりついてでも、自分の責任でやり遂げるしかない」と考えるように仕向けるのです。

編集部:背水の陣に追い込んで、危機感を持たせるのですね。

肌附氏― その通りです。ただし、ここで注意しなければならないことがあります。「君たちに任せた」と口で言うだけでは、単に放任していることと変わらず、管理者としては無責任です。加えて、業務の担当範囲が不明確であるため、部下の間で責任のなすりつけ合いが始まる可能性があります。従って、管理者はそれぞれの部下の業務の担当範囲を明確に指示する必要があります。

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