「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
既存の製品の競争が激しくなり、利益率が徐々に下がり始めています。そこで、既存製品が利益を上げている間に新規事業を立ち上げて軌道に乗せる必要があると、最近経営陣が声高に叫ぶようになりました。私は既存製品を開発する事業部に在籍しているのですが、5年後のことを考えると不安です。新しい事業に挑む上でトヨタ自動車が大切にしていることはありますか。

編集部:2016年3月期のトヨタ自動車の連結業績は売上高が約28兆4000億円、営業利益が約2兆8500億円でした。同社にとって自動車事業は「超」の付く安定かつ優良事業。はっきり言って、新規事業を立ち上げる必要はありませんよね。

肌附氏―そんなことはありません。確かに、今現在を切り取れば、トヨタ自動車は自動車の開発、生産、そして販売が主力事業であり、そこで十分な売上高と利益を獲得できています。そして、もちろんこれからも自動車事業を持続的に成長させるべく、従業員が「全員参加」で日々改善を続けています。

 世の中には、足元の売上高や利益の大きさに耳目を奪われて、「トヨタなら100年先も安泰だ」「国が破産してもトヨタは生き残る」などと大げさに口にする人もいます。しかし、トヨタ自動車の経営がいつまでも盤石だと考える人は社内にはほとんどいないはずです。特に経営陣はもちろん、管理者の中にはそうした人間は全くいないと言っても言い過ぎではないでしょう。

編集部:確かに、今や世界で1000万台のクルマを販売して世界一の自動車メーカーになった姿からは、安泰とか盤石とかいった言葉しか浮かびません。しかし、よく考えてみるとトヨタ自動車が危機感を持っていると感じる点もあります。

 例えば、2016年10月12日にトヨタ自動車がスズキとの提携検討を始めると発表した際には、トヨタ自動車社長の豊田章男氏が、情報技術や自動運転技術の開発に関して「1社では限界がある。インフラ開発での協調や標準化に向けて、仲間作りが重要な要素になる」と報道陣の前で語りました。自動車の開発規模が膨大になり、トヨタ自動車といえども単独で乗り切るのは難しいと捉えていることが感じられる言葉でした。

 ハイブリッド車(HEV)の世界的な成功からクルマ本体の開発は盤石かと思うと、複数の異なる材料を使って車体の軽量化を図る「マルチマテリアルボディー」の分野では欧州、特にドイツの自動車メーカーに水を空けられているといった課題もあると一記者として感じています。

 トヨタ自動車の社員は危機感を持って日々の仕事に臨んでいるのですね。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ものづくり」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は申し込み初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら