「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
50人のメンバーが在籍している開発部で係長クラスを務めています。開発業務に加えて、新入社員の教育も任されるようになりました。毎年4~5人の新人がこの部に配属されています。私は一生懸命教育しているつもりですが、実は個人の能力差が大きくて悩んでいます。仕事を早く覚えてもらう良い方法はありませんか。

編集部:5月に入りました。4月に会社に入ってきた新入社員の多くが本格的な仕事をスタートさせます。しかし、新入社員の教育は簡単ではありません。トヨタ自動車ではこの問題をどのように捉えているのでしょうか。

人を育てるには時間がかかる

肌附氏— 2000年以降のことでしょうか、日本企業のどこに行っても「新入社員には即戦力になってほしい」と耳にするようになりました。経営者も管理者も口をそろえて、そう言うのです。2000年前後から中国をはじめとする新興国が台頭したことに加えて、IT革命が起きたことにより、製造業のグローバル競争が激化しました。これにより、日本の製造業はどんどん余裕を失っていきました。こうした背景から多くの日本企業が人材育成に対する投資効果を厳しくみるようになり、結果、新入社員に即戦力になることを求めるという状況になっているのでしょう。

 グローバル競争の激化の影響を受けているのはトヨタ自動車も同じです。しかし、トヨタ自動車は人材育成に関して、決して成果を焦りません。同社には「ものづくりは人づくり」という言葉があります。顧客のニーズをきちんと満たし、優れた品質の製品を造り上げるには、まずは社員がそれらに必要な業務をきちんと遂行できるように育てなくてはならないという意味です。そうした社員を、果たして即戦力になることを期待して短期間で育てられるのでしょうか。

 トヨタ自動車では、社員を一人前に育てるには7年程度かかるとみています。一人前とは、「あるべき理想の姿」に向かって常に改善を考えて実行できる「改善マインド」を持ち、危機と呼ばれる大きな課題が生じても、立ち向かっていくだけのガッツを持っていること。その上で、現行の業務をさらに改善すべく自律的に動いていく人材のことです。熾烈なグローバル競争にもくじけない能力、そして精神力を備えるには、しかるべき時間と資金を人材育成に投じる必要があるのです。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ものづくり」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら