日本や欧米の企業が先行し、台湾や中国などの新興企業がキャッチアップする─。ロジックLSI、液晶、デジタル家電など、さまざまな分野でこれまでたびたび繰り返されてきた構図です。

 そして今、電力の制御や供給などを担うパワーデバイスの分野でも、同様の構図が再演される可能性が見えてきました。IGBTやSiC、GaNといった、耐圧600V以上の高耐圧パワーデバイスではこれまで、機器メーカーが他社製品と差異化するために、自らの要求仕様を反映したカスタム品を求める傾向がありました。この結果、価格が高止まりし、パワーデバイスの使いこなしに長けた日本企業などが限られた用途で細々と使ってきました。

 こうした状況が終わりを迎えそうです。今後パワーデバイスの汎用化が進み、多くの機器メーカーが同じ品種を利用するようになります。これまで「高嶺の花」だったパワーデバイスが、より安価に、使いやすくなるのです。この原動力となるのが、台湾などの大手ファウンドリー企業の参入による設計と製造の水平分業化、および中国メーカーなどの相次ぐ市場参入です。これから起こるのが、台湾や中国などの新興企業と、パワーデバイスの老舗である欧州や日本企業などの間で繰り広げられる世界レベルでの大競争です。今回の特集「パワーデバイス、世界競争」では、技術専門誌のスタンスから、このダイナミズムに迫りました。

 もう1つ、今号で是非お読みいただきたいのが、特集「半導体もメイカーズ」です。機器の付加価値に直結する自分だけの半導体を1個から低コストに作る、「半導体版メイカーズ」の世界が現実味を帯びてきました。直径0.5インチ(約12.5mm)の超小型半導体ウエハーを使った「ミニマルファブ」の製造サービスがついに商用段階に入ったのです。これによって、いわゆる“マイ半導体”を中小企業や個人すらも設計・製造できるようになります。3Dプリンターがものづくりの裾野を広げたように、半導体製造でも同様の変化が起こります。

 その3Dプリンターも、次の飛躍に向けて業界が動き始めました。米HP社やリコーを皮切りに、大手のプリンターメーカーが、こぞって業務用3Dプリンター事業に参入してきています。「Industry 4.0」時代の有力な生産手段を目指し、生産速度を一気に高める動きも始まっており、目が離せません。解説「普及期迎えた3Dプリンター、次の飛躍へ桁違いの製品も」では、電子技術者向けに3Dプリンターの最新状況をまとめました。

出典:2016年10月号 p.9 日経エレクトロニクス
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