NAVIGATOR'S EYE
今回の筆者は、設計・生産システムの研究に一貫して従事され、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「革新的設計生産技術」でサブプログラムディレクター(PD)を務められている法政大学教授の木村文彦氏です。ICT(情報通信技術)の進展を受け、ものづくり産業が今後目指すべき方向を展望していただきました。(鈴木俊吾)

 市場のグローバル化によって、日本の製造業は様変わりした。企業が世界展開を加速し、産業構造が「加工貿易モデル」から「直接投資モデル」にシフトしたことで、近年は輸出入による貿易収支の赤字を対外投資による所得収支の黒字で補い、国の経常収支として黒字を確保している状況である(図1)。従来型のものづくり産業には限界が迫っている。

図1 日本の国際収支(経常収支)の推移
「貿易収支」(物品の輸出入による収支)、「サービス収支」(輸送や旅行などによる収支)、「第一次所得収支」(利子や配当金による収支)、「第二次所得収支」(対価を伴わない資産の移転による収支)の合計が経常収支となる。2011年を境に貿易収支は赤字となり、第一次所得収支によって経常収支を黒字化している構図が続いている。財務省の国際収支データを基に作成した。
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 日本に限らず、世界の先進国は新興国との厳しい競争に直面し、多くの課題を抱えている。これに伴って、製造業の再興に向けた政府主導の活動が目立ってきた。本来、ものづくりは自由競争を旨とする民間主導の活動である。しかし、「厳しい競争を勝ち抜くには、政策的なてこ入れが必要である」というのが近年の認識だろう。

 具体的には、ドイツの「Industrie 4.0」(以下、インダストリー4.0)、米国の「NNMI(National Network for Manufacturing Innovation)」、英国の「High Value Manufacturing Catapult」など、さまざまな動きが見られる1~3)。さらに、現在は新興国である中国も建国100周年となる2049年には工業先進国に躍進するという意欲的な計画「中国製造2025」を打ち出した。これらの動きに共通するのは、近年のICT(情報通信技術)の急速な進展によって、旧来のものづくりの秩序が破壊され、革新的なものづくり産業が誕生するという、期待と恐怖が入り交じった認識に基づいていることである。

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