手ざわり感の良い製品を造る生産技術は、以前からクルマの内装部品などを対象に研究開発が進んできた。ただし2000年ごろまでは、手ざわり感の良い材料を表皮材として製品表面に貼ることに重点があった。近年の技術は、もっと簡便かつ低コストな方法で、製品表面に細かい凹凸のあるテクスチャーを造り込むことを目的としている。

材質よりも微細形状で勝負

 この変化が顕著なのは、クルマのインスツルメントパネル(インパネ)やドアの内張りといった内装部品だ。1980年代には、指で押して凹む弾力のある軟らかな材料、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)やポリウレタンを表皮材として部品表面に貼ったり形成したりする工法が普及した*1。しかし生産設備が高額になるため、クルマ1車種当たりの生産量が少なくなるにつれて、あまり使われなくなっていったという。

*1 例えば、住友化学が当時開発した「SP モールド工法」は、TPEの表皮材を金型に入れておき、本体の樹脂材料を金型内に射出して追加することで、表皮材の変形と部品の成形を同時に実施する方法。「伸びの少ない表皮材をどう扱うか高度なノウハウが必要」(当時開発を担当したMTO技術研究所所長の桝井捷平氏)という。

 普及価格帯の車種向けに、表皮材を使わず表面形状のみの工夫で質感を高めたのが日産自動車の「ソフトフィール・シボ」である。シボはもともと、樹脂成形品の表面のツヤを調整したり、ウエルドラインを目立ちにくくしたりする目的で、金型表面に梨地や革模様の細かい凹凸を設けて成形品に転写したもの。この微細形状の大きさを指紋の大きさにそろえると、指でさわったときに微細形状が指紋の谷間に接触するようになる。指紋の谷間は普段物体があまり触れないが、液体は触れる部位であるため、結果として湿り気のある、しっとりとした感触が生じる*2

*2 日産自動車のWebサイト「高触感内装コンセプト」(http://www.nissan-global.com/JP/ TECHNOLOGY/OVERVIEW/pq_interior.html)を参照。

 シボは射出成形だけで形成でき、塗装も必要ないので、コストを抑えられる。それでいて質感を高められたため、普及価格帯のクルマでありながら1つ上のクラスと同等の質感を実現できた。カルソニックカンセイも、日産車向けに供給するインパネに使ったと公表した(図1)。

図1 シボでしっとり感を表現したインパネ
塗装や表皮の加工が不要なため、低コストで量産可能。カルソニックカンセイが「人とくるまのテクノロジー展2013」に出展。
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 しかし、シボは金型を用いる技術であり、部品を大量生産することを前提としている。表皮材を貼る技術に比べて安価ではあっても、個別にさまざまな触感を実現することまでは想定していなかった。

 最近の技術、すなわちテクスチャーのある加飾用フィルムを使う方法や、デジタルデータでテクスチャーを加工する方法は、いずれも多様なテクスチャーを手軽に実現できるところに特徴がある。

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