少量半導体需要の高まりを受けて、既存の半導体生産・提供手法を変革する提案が続々と登場している。カスタム仕様の半導体向け製造サービスを低コストに利用可能にする工夫や、カスタム化のためのソフトウエアの開発コストを下げられるマイコンなどである。償却の進んだ製造ラインを活用して利用の敷居を下げたファウンドリーサービスも増えてきた。

 少量のカスタム半導体を手に入れる手段が多様になってきた(図1)。ミニマルファブ装置による製造が利用可能になるのに加え、従来からある少量半導体対応の手段が進化している。従来からの手段には、カスタムLSI、マイコン、FPGAなどがある。このうちカスタムLSIの製造手法とマイコンで、少量半導体を安く利用できるようにする工夫が出てきた。特に、ミニマルファブ装置で対応しきれていない少量半導体の需要に応えられる。微細な製造サービスで作るデジタルICや、ミニマルファブ装置の能力が不足しているMEMS加工の分野である。

図1 少量半導体需要に応える選択肢が増える
少量生産の機器向けの半導体需要に応えるサービスや製品が増えてきた。開発段階に必要な、いわば“初期費用”を抑える提案が増えている。
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 カスタムLSIの製造では、試作開発ラインをユーザーに時間貸しして、ユーザー自身が装置を設定操作することでコストを下げるサービスがある(図2)。東北大学が開設する「試作コインランドリ」が代表例だ。主にMEMS加工に向ける。「利用企業はここ2年で2倍になった」(東北大学 マイクロシステム融合研究開発センター 准教授の戸津健太郎氏)。自社の開発設備だけでは不足する場合に使う例が多いという。

図2 試作コインランドリはお値打ち感で人気
東北大学の試作コインランドリが支持される理由の1つは価格。2015年は133社が利用し、平均利用料金は4535円/時だった(a)。低価格にできたのは、NECトーキンの4インチパワートランジスタ工場設備を基に、学内の不要となった研究設備のほか、企業の半導体工場の“お古”設備を数多く導入しているから。一方で、成膜装置など利用率の高い機器は新規購入で増強する(b)。セルフ方式なのも低価格の要因だ。30種のターゲットを用意するスパッタリング装置では、使ったターゲットをメモで示しておく(c)。次の使用者も同じターゲットを使う場合は取り替えなくて済む、という仕組みだ。(グラフ:東北大学 准教授 戸津健太郎氏)
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 人気の一因はコストパフォーマンスの高さだ。ユーザーは利用時間に応じて施設使用料や装置使用料を支払う。実際のユーザーの平均利用料金は4535円/時(2015年の実績)。委託実験すれば研究員だけで1万円以上/時間となるのに比べればぐっと安価だ。契約金も不要、試作だけでなく少量生産も可能など契約が柔軟といった点で使い勝手がいいという。

 もう1つユーザーに好評なのが、スタッフへの相談が無料という点だ。MEMS加工では作り方で特許を取得する例は少なく、むしろオープンにして早く試作するという考え方を採る。加工条件(レシピ)やその結果については、基本的に試作コインランドリに蓄積させる。スタッフはノウハウを提供したり議論にも応じる。一方で、標準化されていないMEMS加工では実質的には作り方が重要になるという面もある。自社の社員が製造に関わる同施設は、技術習得や情報流出防止の面でも利点になるとみなすユーザーも多いという。

 “手運び”で作業し、装置の待ち時間もほぼないため、比較的早く作製できるのも特徴だ。月産のウエハーが10枚、年間100枚程の規模であれば、生産するのも可能という。さらに、開発受諾のメムス・コアやMEMSファウンドリーのアドバンテスト コンポーネントなど、地域の企業と連携し、開発から大量生産への連携も図る。

 当初は半導体MEMSでの利用を想定していたが、最近では工学系や生物系など、さまざまな用途にユーザーが広がっている。例えば、レンズなどのプラスチック光学部品を扱うナルックスは、成型金型の微細構造の作り込みに利用する。「光学部品の機能性追加のため、立体構造の上に微細構造を作り込むといった複雑な微細構造が要求される。フォトリソグラフィーやエッチングの工程について、自社にある装置で対応できない部分に試作コインランドリを利用している」(同社 生産技術開発部 ナノ加工課の西牧真木夫氏)。

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