かつてのソニーは、どこよりも本質に迫れていたからこそ、神話のような大成長を遂げた。しかし、今のソニーはそうではない。今の中期経営方針も本質から乖離したものだ。だからこそ筆者は本連載で「ソニーは、経営陣から本質に回帰せよ」と訴えてきた。では、ソニーの経営陣とは、誰のことなのか。

表 ソニーの役員一覧(2016年5月時点)
[画像のクリックで拡大表示]

 よく知られるように、ソニーは1990年代後半から米国流のコーポレートガバナンスを推進し、社外取締役の比率を増やしてきた。その結果、今や社外取締役は、全取締役12人中の10人を占める(表)。つまり、ソニーの経営陣とは、社内の経営陣である社内取締役と執行役、および社外の経営陣である社外取締役の総体のことだ。

 ならば、筆者が訴える「経営陣は本質に回帰せよ」における「回帰」の主語は厳密には社内の経営陣だから、社外取締役に向けては「社内の経営陣を本質に回帰させよ」の意味となる。従って、筆者は社外取締役に対しては「社内の経営陣を本質に迫らせる」ことを求めていることになる。

 社外取締役の役割とは、本来、社内の経営陣による経営を正すことであり、平たく言えば、経営の正誤判断の基準となる考えを社内の経営陣に納得させることなのだ。

 少し詳しく見てみよう。一般的に正誤判断の基準として示される考えには、「事物の本質に準じる考え」と「事物の状況に準じる考え」がある。前者は、事物の持つ本質(ある事物全てに当てはまるもの)と偶有性(ある個別の事物にたまたま当てはまるもの)という2つの属性のうち、事物の本質のみに準じる考えであり、後者は事物の偶有性のみ、ないしは本質と偶有性の両方に準じる考えといえる(図1)。

図1 本質とは何か
「本質」とは、全てのある事物に当てはまるものといえる。
[画像のクリックで拡大表示]

 しかし、企業の状況は個々に異なるから、「事物の状況に準じる考え」は、状況が異なる企業にとって経営の正誤判断の参考にはなっても、基準にはならない。例えば、エコノミストやコンサルタントがよく言う「大手米国企業では○○手法を導入して売り上げが増えた」といった事物の状況に準じる「企業では○○手法を導入すれば売り上げが増える(かも)」との考えは、あくまで「かも」でしかない。

 それに対して、企業の状況が個々に異なっても「事物の本質に準じる考え」は、経営の正誤判断の基準になり得る。「人間(ビジネスマン)の集まり」という企業の本質に準じる「企業の改革とは、企業を形成する個々人の精神の改革である」との考えは、全ての企業に当てはまり、経営の正誤判断の基準になるように、である。

 従って、社内の経営陣による経営を正すこと、すなわち経営の正誤判断の基準となる考えを社内の経営陣に納得させることは、「事物の本質に準じる考え」を社内の経営陣に納得させることいえる。そして、それは、「社内の経営陣を本質に迫らせる」ことに他ならない。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ものづくり」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は登録月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら