横浜ゴムは2017年10月、「インフォマティクス技術を用いたタイヤ設計技術を開発した」ことなどについて発表した。インフォマティクスは「シミュレーションと機械学習の組み合わせで設計を支援する枠組み」(横浜ゴム理事で研究本部小石研究室・研究室長の小石正隆氏)という。

 「これまで多目的設計探査と呼んでいた技術を発展させたもの」(同氏)。同社は以前から、タイヤの転がり抵抗を減らし、上下方向のばね性を下げ、左右方向と前後方向のばね性は上げる、といった複数の異なる要件を同時に満足させる設計案をシミュレーションで作り出す計算手法に取り組んでいた1)。ただしそこで得た複数の設計案からの選択、あるいは所定の性能を得る上でどのような設計因子が重要かの分析は、これまで設計者が自分の考えで進めていた。ここに機械学習を使い、さらなる自動を目指した。

タイヤにも材料にも同じ枠組み

 同社はこの「シミュレーションと進化計算によって多数の設計案を生成する」→「機械学習で多数の設計案を分析する」という枠組みをインフォマティクス技術と呼んでおり、タイヤ設計だけでなく、ゴム材料の組成の設計にも適用していく考えだ。

 実はゴム材料については、既に機械学習を適用した成果を得た*1。その前段となる計算では、ゴム材料の母材にフィラー(シリカやカーボンブラックなど)を混ぜて練った状況をコンピューター上のモデルとして表現し、粘弾性シミュレーションで解析した(図1)。モデルは1nm角の立方体(ボクセル)を縦横高さに512個ずつ、合計1億3400万個配列したもの。「フィラー半径」「フィラー濃度」「フィラー分散半径」「境界層厚さ」など合計6個の変数(設計因子)を制御し、100通りのバリエーションを持たせたモデルを生成した。

*1 タイヤについては「ADVAN A052」「BluEarth-1 EF20」の2製品で、開発に多目的設計探査を利用した実績がある。ただし、機械学習は未適用。
図1 タイヤ用のゴム材料のモデル
母材にフィラー(シリカやカーボンブラック)を混ぜた様子を「フィラー半径」「フィラー濃度」「フィラー分散半径」「境界層厚さ」など合計6個の変数で表す。縦横高さそれぞれ512マスのボクセルで表現し、1マスの大きさは1nm。上の2つは母材を青色、下は透明で表示。(出所:横浜ゴム)
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 これを60世代にわたって、弾性率を上げる一方で応力を下げ、応力のバラつきも下げるといった方向で進化させ、6000通りのモデルでシミュレーションを実行(図2)。モデル自体も、モデルの数も大きいため、計算には東京工業大学のスーパーコンピューター「TSUBAME 2.5」を使用。実計算時間は1.5カ月程度になった。

図2 シミュレーション計算と機械学習
1度に100通りのバリエーションでゴム材料のモデルを作成し、それぞれ粘弾性シミュレーションを実行。それを60世代にわたって進化させ、合計で6000通りのシミュレーション結果を得る。その結果を物理特性に応じてグループに分け、それぞれ設計上の因子との関係を機械学習で洗い出す。
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