将棋や囲碁の手を何十手も読むように、コンピューターが何十通りもの設計案を試行錯誤して検討する。設計者はその結果を見て、不十分ならコンピューターにやり直しを命じ、良いものができたらそれを採用する。こんな「コンピュテーショナルデザイン」の利用範囲が大きく広がり始めている。

 設計は、相反するいくつもの要求をなるべく高い次元で実現する作業だ。設計案を考えて、機能や性能を得られるかどうか検証し、課題を解決できる設計案を再び考える、という試行錯誤が必要になる。これまでは、たとえ3D-CADやシミュレーションを駆使したバーチャルな設計であっても、設計案自体を考えるのは設計者の仕事だった。

人の思考の限界を超える

 しかし、コンピュテーショナルデザインではコンピューターに設計案を考えさせる(図1)。そこには、人の思考の限界を超えられる、という期待がある。

図1 コンピューテーショナル・デザイン
計算能力の高まったコンピューターに、設計の試行錯誤を実行させられるようになった。その結果、要件をクリアした案を最初から得られ、中には人が思いつかない案も出てくると期待できる。
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 日野自動車はコンピュテーショナルデザインを利用して、近未来を想定したモビリティー(小型の自動搬送車・自動運転バス)のコンセプトモデルを従来にない形にした(事例1)。「ものを使う人それぞれに合わせて、意匠デザインも構造も機能も、さまざまな要素を考えに入れた最適なものを短時間で生み出すのが今後のものづくりの在り方」(日野自動車デザイン部創造デザイン室未来プロジェクトグループ サブリーダー兼コーポレート戦略部の渡邊邦彦氏)。設計者やデザイナーが経験に基づいて考えるだけでなく、コンピューターで最初からなるべく多くの要件を盛り込んだ案を生成させる技術が必要と考えた。

 同社はコンピュテーショナルデザインに取り組む上で、建設業界に注目していた*1。個々の敷地の上に、多数の関係者の要望を集約して1つずつ最適な建物を造るスタイルが、今後のものづくりの方向と一致していると考えた。例えば、建物内の音響効果を最大化する設計案をコンピュテーショナルデザインで生成する試みがある。アンズスタジオ(本社東京)が建設に参加した「釜石市民ホールTETTO」(事例2)では、音響効果を高めるように曲面形状に加工した建材を使った。

*1 建築分野では、3D-CAD「Rhinoceros」にビジュアルプログラミングツール「Grasshopper」を組み合わせて、形状を自動生成するアルゴリズムを動かす事例が多い。

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