微細な気泡を含んだ水を作り出すシャワーヘッドで名を馳せる中小企業が岐阜県にある。それが、田中金属製作所だ。主力製品は、直径数0.1μ〜50μm程度の微細な気泡「マイクロナノバブル」を含んだ水を吐出するシャワーヘッド「ボリーナ」シリーズである(図1)*1

*1 国際標準化機構(ISO)の基本規格「ISO 20480-1」では、大きさが100μm未満の気泡を「ファインバブル」、同1μm未満の気泡をウルトラファインバブルと定義しているが、本記事では田中金属製作所の表記に沿って0.1〜50μm程度の気泡をマイクロナノバブルとする。

図1 主力製品のシャワーヘッド
既存のシャワーホースに取り付けて使う「ボリーナ」 (a)。水中に溶存する気体を微細な気泡にする機構を組み込んだ。(b)は特殊な撮影で泡を可視化したもの。マイクロナノバブルの水には保温・保湿効果があるとされ、ユニークな商品としてテレビで取り上げられたこともあってヒット商品となった。 (出所:田中金属製作所)
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 2011年に発売したこの製品が大ヒットし、それまで低迷していた同社の業績はV字回復を果たした(図2)。従来は黒字の年度でもせいぜい数%程度だった利益率は、2013年度は一気に20%台に上昇。2012年度に8000万円あった累積赤字を一気に解消した。その後も売り上げの伸長と高利益率を維持している。

図2 売上高と利益率の推移
2013年に急回復を果たした。売上高もさることながら、それまで数%だった利益率は20%前後となり、一気に高収益企業となった。
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赤字企業から高収益企業へ

 液体内部に存在するμmオーダーやnmオーダーの微細気泡には、水質浄化や洗浄効果の向上、農作物の育成促進などさまざまな効果があるとされ、近年注目を集めている。シャワーや温浴でも特殊な効果が期待されており、詳細なメカニズムは分かっていないもののボリーナシリーズのユーザーからも「湯冷めしにくい」「保湿効果があり乾燥しにくい」といった声が寄せられているという。外部機関に依頼した調査でも、通常のシャワーに比べて使用後の肌表面温度の上昇が大きくなるとのデータが得られている。

 ボリーナシリーズの強みは、構造による水流と圧力の制御だけで微細気泡を作れるところ。細い水流を旋回・攪拌させることで水中の溶存気体を溶出させて微細な気泡を生み出している。その秘密はヘッドの根元に特殊な機構にある。最初に旋回流を発生させ、旋回流がテーパー部に沿って流れる際に流速が高まるとともに減圧されて気泡の生成(キャビテーション)を促す。さらに負圧空間の存在によって旋回流が広がろうとする際に、旋回流中央にある負圧部の領域が大きくなることで気泡の発生量が増すと考えられている。

 一般に微細気泡生成装置は外部から気体を強制的に送り込むものが多く、業務用となると数百万円する。一方のボリーナシリーズはシャワーヘッドを取り換えるだけで、一般家庭でも簡単にマイクロナノバブルのシャワーを実現できる。その手軽さと、温浴効果を高めるという機能が受けてヒットにつながった。

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