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 食品大手のキユーピーが、マヨネーズやドレッシングなどを生産する自社工場においてロボットの導入を加速させている。

 2012年ころから現在までの約4年間で、茨城県にある主力の五霞工場をはじめとして、愛知県の挙母工場や佐賀県の鳥栖工場など複数の工場で箱詰め作業などに相次いでロボットを導入した(図1)。

 繰り返し作業などに従事する従業員の負担を軽減するとともに、人間の作業によるミスを減らし、食品の品質確保を徹底させた。

図1 全社でのロボット活用の推進役である五霞工場
茨城県に位置し、東日本地域向けに主力商品である「キユーピーマヨネーズ」や各種ドレッシングなどを生産する。 キユーピーが国内に持つ8つの直営工場のうち、伊丹工場と並ぶ基幹工場としての位置付けである。(写真:キユーピー)
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 段ボール箱の組み立てや商品のピッキング、箱詰めなど従来、独立していた複数の工程をロボットの導入でひとまとめに統合。省スペース化も実現した。同社は現在、食品業界ではまだ取り組み事例が少ない、原材料の秤量や配合工程でもロボットの導入を検討しており、品質確保の徹底も一層強化しようとしている。

 キユーピーのロボット活用方法が特徴的なのは、全国8カ所の各工場の役割と位置付けを明確にし、戦略的にロボットを導入している点だ。具体的には各工場を、主力商品の生産を担当する「マザー工場」、新商品など多品種変量の生産に対応する「サテライト工場」の2種類に分類し、役割を明確化した。

推進役の基幹工場を選定

 マザー工場は「キユーピーマヨネーズ」や「深煎りごまドレッシング」といった、生産量の多い家庭向け商品の生産を担当。生産の効率化が肝になる。一方、サテライト工場は、容量などのバリエーションが多い業務用商品や、生産量が事前に予測しにくい家庭向け新商品などを担当。ラインの柔軟性や省スペース化が求められる。同社は2013年ころからこうした役割分担を明確化し、五霞工場と兵庫県の伊丹工場の2つをマザー工場、残りの6工場をサテライト工場と位置付けた。

 マザー工場の至上命題は主力商品の生産の効率化だが、同社の場合、実はもう1つの役割をマザー工場に持たせた。それが、食品生産においてロボットをどのように試し、導入していくか。その可能性を探る先導者としての役割だ。

 一般に食品の生産では、それぞれの工程ごとに専用機械が多く使われている。専用機械は生産性が高いものの、大型で設置スペースを多く取り、柔軟性も低い。このため、マザー工場での主力商品の大量生産には適しているが、サテライト工場での多品種変量生産には必ずしも向いていない。これに対しロボットは柔軟性が高いため、作業内容を生産品目によって変えたり、複数の工程を1台でひとまとめに担当するといったことが可能で、サテライト工場に向く。

ノウハウを全国に展開

 そこでキユーピーは、まずマザー工場においてロボットを積極的に活用し、そこで培ったノウハウを全国のサテライト工場に展開するという戦略を取った。各サテライト工場でバラバラにロボット導入を試すのではなく、マザー工場が先導役としてその役割を担う体制としたのである(図2)。

図2 マザー工場でロボット技術を磨き全国の工場へノウハウ注入
マザー工場である五霞工場で、多品種変量生産のための柔軟性向上や省スペース化のための技術を磨いた上で、そのノウハウを地方のサテライト工場に展開する。五霞工場はロボット活用のための、一種の実証検証の役割を受け持つ。
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 キユーピーはグループ内で、マヨネーズやドレッシングの生産だけでなく、サラダやカット野菜、各種総菜などの生産も手掛けている。こうした加工食品の生産工程でも、容器のピッキングなどでロボットを活用できる余地があり、マザー工場はそのノウハウ蓄積も担う。