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 2017年3月、協働ロボットの導入を発表した化粧品大手の資生堂(Case Studyの記事を参照)。同社のロボット導入を支えた黒子となる企業があることをご存じだろうか。銀行やスーパーなどで使われる通貨処理機で高い世界シェアを持つ大手メーカー、グローリーだ。

 グローリーは、協働ロボットの先進ユーザーとしてロボット分野では広くその名を知られた企業である。2011年に発売されたカワダロボティクスの双腕型協働ロボット「NEXTAGE」を埼玉県の自社工場にいち早く導入。2014年には安倍晋三首相も見学に訪れたほどだ。現在では合計23台もの協働ロボットが同社埼玉工場で日夜稼働している。

 化粧品とは無縁の通貨処理機のメーカーであり、先進的とはいえロボットのユーザーの立場でしかなかったグローリーが、なぜ畑違いの資生堂のロボット導入を支援したのか。そこには、自社のロボット活用ノウハウに自信を持つグローリーの決断があった。それまでのユーザーという立場を超えて、新たに社外からロボットを用いた生産システムの構築を請け負う、いわゆるシステムインテグレーション(SI)事業への参入を決めたのだ(図1)。資生堂のロボット導入は、このグローリーのSI事業の事実上の第1号案件なのである。

図1 グローリーのSI部門を率いる飛田氏
飛田氏はもともとは同社の生産技術部門を率いていたが、2017年4月から社外向けのシステム構築事業を率いる。写真左は協働ロボットを使って同社が組み立てている自動釣り銭機。(写真左:グローリー)
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 グローリーは埼玉工場の生産技術部門で10年近く培ってきたロボットによる自動化ノウハウを、今後は社内の生産効率化に生かすだけでなく、社外からカネを稼ぐ事業へと昇華させる。2017年4月付で、SI事業を担う新組織「ロボットSI事業推進プロジェクトチーム」を発足。協働ロボットの活用に長けた生産技術部門の精鋭をごっそり同組織に異動させた(図2、図3)。社内の他部門からも技術者を集め、約20人の体制とした。

図2 合計23台の双腕型協働ロボットが稼働
グローリーの埼玉工場の様子。2011年に双腕型の協働ロボット「NEXTAGE」を導入して以来、順次台数を増やし、現在では23台が稼働している。工場内は人とロボットの空間が入り交じって配置されている。
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図3 社外向けのシステムインテグレータ部門を創設 
2017年4月に社外向けのシステムインテグレーションを手掛ける組織「ロボットSI事業推進プロジェクトチーム」を創設した。社内向けの生産技術部門の精鋭メンバーが移籍し、20人ほどの陣容となった。
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 同社の売り上げは2016年3月期で約2270億円。2020年3月期にはその1%弱となる十数億円を、この新規事業であるロボットSI関連で売り上げる狙いだ。日本全体の産業へのインパクトを踏まえると決して大きな数字とは言いがたいが、同社の生産技術部門で協働ロボットの導入を初期から主導し、現在はSI部門を率いる立場へと異動した飛田昭夫氏(ロボットSI事業推進プロジェクトチーム 部長)は「大きな事業に成長してもらいたいという当社経営層からの期待をひしひしと感じる」と語る。

情報システム分野と同じ構図

 ロボット分野に限らず、企業が内製で培ってきたシステム構築ノウハウを社外に供与し、新規事業としてビジネス化しようという動きは産業界で以前からよく起きてきた。