健康機器のタニタが「食堂」をやって気付いたこと(page 3)

谷田千里氏 タニタ 代表取締役 社長

2018/07/23 11:00
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

――“メーカー”が“サービス業”に乗りだすという大きな挑戦でした。

 タニタ食堂を手掛ける以前の事業は、ほとんどが父が始めたもの。だから、うまくいってもいかなくても、「お父さんがやったんでしょ」と言われるのです。

 私にもプライドがあるので、自分が立ち上げた事業がどこまでできるのか、力試しをしたいという思いを強く持っていました。タニタ食堂は、まさにタイミング良く展開できた事業だったと思います。

 率先垂範を心掛けているので、私のチャレンジする姿勢を通じて「いろいろなことをやっていいよ」という姿勢を社内に示す意味もありました。メーカーがサービス業を手掛けるという挑戦は、まさに“旗印”にしやすかったのです。

――タニタ食堂の展開を通して気が付いたことはありますか。

 タニタ食堂には健康への関心が高い人が多く来店してくれます。ですが、それ以外のさまざまな層の人を意識する必要があると強く感じたエピソードがあります。

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 ローソンのお弁当を監修したときのことです。当時は全国展開する企業とコラボレーションした例がなかったため、嬉しくて発売日当日にナチュラルローソンの店舗に足を運びました。以前コンサルティングの仕事をしていた時の癖が残っていて、店内でお弁当を手に取るお客さんをチェックしていました。1時間半くらいはいたでしょうか。店員さんは、さぞ不審に思われたことでしょう(笑)。

 そこで目の当たりにしたのが、タニタのお弁当をカゴに入れた後に、カップラーメンに手を伸ばしたお客さんの姿でした。せっかくお弁当を手に取ってくれたのに、それだけでは満足させることができないんだ、と衝撃を受けました。

 そのお客さんは、服装などからどうやら工事関係の仕事をしていることが想像できました。実は、タニタが監修する500kcal前後のお弁当はオフィスワーカー向けに作られていたため、体を動かす仕事をしている人にはエネルギーが足りていなかったのです。

 カップラーメンをカゴに入れている姿を目にするまでは、タニタのお弁当が全ての人に対応している気でいたので、この“お弁当カップラーメン事件”は強く印象に残っています。さまざまな層に対応したメニュー提供はできていなかったと反省するきっかけになりました。

 この経験を生かして、より広く食事を楽しんでもらおうと考えて始めたのが、2018年6月にオープンした「タニタカフェ有楽町店」の事業です(関連記事)。タニタカフェでは、食事の楽しさや心地よさを重視し、健康への関心の高さによらずにさまざまな人に利用してもらえるよう工夫を凝らしています。例えば、野菜をたっぷり使うことでタニタらしいヘルシーさを出しながらも、カロリーや塩分などはタニタ食堂の基準にとらわれないメニューを展開しています。

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