「2010年ごろから、日本の大手企業は大学の独創的な研究成果をあまり受け取らなくなった」――。こう嘆くのは、東北大学発ベンチャー企業のC&A(仙台市)の創業者で、現在同社のCEO(最高経営責任者)とCTO(最高技術責任者)を兼務する東北大金属材料研究所の吉川彰教授だ(図1)*1

図1 東北大学の吉川彰教授

*1 吉川氏が言う「2010年ごろから」とは、日本の大手企業が既存事業の強化・拡充に追われ、基礎研究を担当する“中央研究所”の役割を収縮させた時期になる。さらに、例えばシャープは2009年3月期に最終損益1258億円の赤字に陥った。その前年は純利益1019億円と過去最高を示していたが…。当時、赤字になっていた三洋電機は、2009年にパナソニックの友好的TOBによってパナソニックの子会社となった。このころ8社あった大手電機メーカー(当時の三洋電機を含んで)は、それぞれ事業収益の確保に苦しみ、大規模なリストラを繰り返した。また、自動車メーカーが海外に生産拠点を移した結果、自動車部品メーカーも生産拠点の国際化に追われ、新規の部品開発がいくらかペースダウンした時である。

 C&Aは、2017年4月に事業化を進める資金調達に成功して一躍注目を集めたPiezo Studioの「兄弟会社」に当たる(関連記事)。単結晶事業を手掛けるC&Aが、ロケットでいえば「第1段ロケット」部分、Piezo Studioが「第2段ロケット」部分に相当する。今回、吉川教授とC&A代表取締役社長の鎌田圭氏(図2)にC&Aを創業した経緯などを聞いた。

図2 C&Aの鎌田圭代表取締役社長

――東北大発ベンチャーのC&Aが設立された経緯は。

吉川 C&Aは2012年11月4日に設立しました。吉川研究室では、いろいろな酸化物やフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などの多彩な単結晶作製技術を基に、その応用技術・利用技術の研究開発にも着手しています。こうした多彩な各種の単結晶を、短納期で企業や研究機関・大学などに提供するとの“ご用命”に応え、さらにその結晶を核とした事業化のコンサルティングなどもできる企業があれば、独創的な部品などの利用技術の開発が進むと考えてC&Aを起業しました。この時の設立資本金は550万円で、私を含む7人が捻出しました。

 C&Aとは「Crystals&Application」の頭文字ですが、「Create&Activate」「Challenge&Achieve」なども意味しています。小粒でも、活力溢れるベンチャー企業を目指すとの意味を込めています。

――鎌田氏がC&Aに加わった経緯は。

吉川 2012年当時、鎌田さんは古河機械金属の研究開発本部素材総合研究所の研究主査として、吉川研究室と共同でシンチレーター(放射線のエネルギーを吸収すると蛍光を発する物質を利用した測定器)の研究開発を進めていたパートナーでした。結果的に、Ce(セリウム)を添加したGAGG(ガドリニウム・アルミニウム・ガリウム・酸素のガーネット)という単結晶を開発しました(図3)。

図3 GAGG単結晶
(画像提供:C&A)
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