医学生だった僕が「起業とIT」に目覚めたワケ(page 3)

田澤 雄基氏 慶応義塾大学病院 精神・神経科 医師

2017/03/22 10:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス

――ITへの関心がもともと強かったというよりも、医療の課題解決に使えるという可能性に着目してITに近づいたのですね。

 ビッグデータという言葉が日本でもよく使われるようになったのは、2009~2010年ごろです。そのコンセプトを知ったとき、医療や健康に対して大きな価値を持つものになるとすぐに感じました。特に、予防や健康寿命延伸という目的にはベストマッチすると。

 医療や健康は今でこそビッグデータやAIの有望な応用先と捉えられていますが、2009~2010年当時、そうした提案はほとんどありませんでした。医療×ITという領域そのものに、医療界の目が向いていなかった。

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 そうであればこそ、ここには可能性があると思いました。プレーヤーがまだいないからこそ、自分にやれることがあると考えたわけです。

 ちょうどこの頃、IT企業や医療コンサルティング企業でインターンシップを経験していました。学部3年、4年と学年は上がっていっても、医学部のカリキュラムではもっぱら教科書に沿った勉強をするだけ。地域に足を運んだり、訪問診療に付き添ったりといった形で現場を学ぶ機会は、ほとんどありません。教科書から学ぶ知識だけでは、地域医療や予防に関する課題解決につながるソリューションは見つからない。そんな思いを抱いたんですね。

 実務経験を積むことが必要ではないか。そう考えて何社かのインターンシップに参加しました。それぞれの企業がどのような課題を医療に見いだし、どのようなソリューションを提供しているかを知ることができた。ITやビッグデータが実社会ですごく可能性を持っていると実感できたのもこの時です。

 実務を経験したことで、起業への抵抗感も薄れました。確たるビジネスプランがあったわけではないのですが、会社を創ろうと考えた。2012年4月、医療ITや予防を事業領域とする「エスティム」を立ち上げました。創業メンバーは私を含む5人です。医学部の同期2人のほか、早稲田大学出身のエンジニアや東京大学出身のデザイナーに加わってもらいました。

 この会社でやりたかったのは、医療に必要なソリューションを“医療の外”に見いだすこと。その経験を自分達だけでなく、多くの医学生に体験してもらいたいと考え、企業にインターンを派遣するなど人材教育にも力を入れました。医師になってからはもっぱら臨床に携わるのだとしても、それまでに“医療の外”の世界を見てきたかどうか、実務を経験したかどうかは、医師としての視野の広さにすごく影響する。そういう気持ちが強くありましたし、その思いは今も変わりません。

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