――起業家としてだけではなく、日本臨床研究学会で代表理事を務められています。

 日本臨床研究学会は、医師主導の臨床研究を支援しています。全国の医師からさまざまなアイデアが集まってくるので、面白そうだなと思うものをビジネスに落とし込んでいます。

 日本の医師が持つアイデアは面白いものが多いです。世界で勝負できるものがたくさんあります。こうした素晴らしいアイデアを論文にして世界に向けて発表したり、賞をとったりするだけでなく、ビジネスとして全国の臨床現場に届けることができれば良いと思っているのです。

 日本臨床研究学会は、今の私にとって“ハブ”のような存在です。その根幹にあるのは、良い医療をみんなが提供できるスキームを作りたいという強い思いです。

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 さまざまなことをしているので、“二足の草鞋を履いている”と思われることもありますが、自分の中ではその全てが一本の線でつながっています。頑張った人が報われる、ワクワクする世の中にしたい――。そのためにさまざまなことをしているだけなので、二足の草鞋を履いているとは思っていないんです。

 医師のアイデアを現場に落とし込むことに加えて、医師に見返りを渡すことも重視しています。アイデアを提供してくれた医師に、立ち上げた会社の株式を持ってもらったり、ライセンス料を支払ったりすることで経済的なフィードバックも渡るようにしています。

 医師から集まってきたアイデアは、きちんと目利きをして選んでいます。臨床現場に立っていた経験を踏まえて、患者や医師にとってのニーズを判断できるのです。

 ビジネスにおける成功は、患者に与えるインパクトの大きさに比例します。しかし、日本において臨床研究分野の後退が著しいことや、これまでの研究支援の経験から推定する限りでは、現場の医師はそれを客観的に捉えることが苦手な傾向にあると考えています。もちろん、目の前の患者にニーズがあればそれを提供する、ということは医師として当たり前の姿勢ですが、一人にしか提供できないものを作るだけではビジネスとして持続可能性をもって取り組むことは難しいと考えています。