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民法の改正で「EPC契約書」はどう変わりますか?(その3)

<第43回> 工期遅延による責任の立証方法が変わる

2018/09/28 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生
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 民法改正法案が国会で成立し、2020年4月から「改正民法」がスタートします。匠総合法律事務所では、太陽光発電所の建設に関するトラブルを巡る法律相談が多く、複数の裁判も担当していることから、この領域における「EPC契約書」の改訂に関し、連載コラムを通じて情報を提供していきます。

 まず、6月20日掲載した同コラムでは、契約約款上、現行民法と改正民法の両方で留意すべきポイントについて解説しました(関連記事1)。また、8月23日に掲載した同コラムでは、民法改正にあたって、「瑕疵」という言葉が消滅し、「契約不適合」という新用語になることの影響を解説しました(関連記事2)。

 今回は、改正民法によって、「工期遅延による責任の立証方法が変わる」という点について解説します。

「工期遅延」は契約違反の最大リスク

 太陽光発電所の開設にあたり、用地取得→太陽光発電事業のプロジェクト組成→各種契約締結、という流れで進行していきますが、当初の計画と工期が大幅にずれてしまい、トラブルが発生するケースがあります。

 この「工期遅延」が発生する原因について分析すると、太陽光発電所という新しい分野だけに、工事事業者の選定が難しいという事情があります。

 国内の建設業界では、住宅事業を中心とした業務を行う事業者か、公共工事など土木工事を中心とした業務を行う事業者は、多く存在しますが、太陽光発電所の工事を専門的に行う事業者は、実は多くないのではないか? と感じています。

 また、工事事業者は、一般的に地元密着型事業者、すなわち、工事事業者の事業所から近接する工事現場を担当する事業者が多いと思われるのですが、太陽光発電所は、そもそも人口密度の低い過疎地域であったり、山林などで工事が行われたりすることも多く、地元密着型業者の施工力を頼りにすることも困難なケースが多くあります。

 その結果、太陽光発電所建設の場合、工事事業者は、他県から出張したり、職人をかき集めてきたりと、相対的に不安定な形で施工体制を構築していくことも多くなり、必然的に「工期を順守すること」が難しい体制となります。

 また、最近の災害リスクも見逃せません。工事期間中に水害や台風災害、地震災害などが発生すると、工事が遅延してしまいます。また、一度、工期が遅延すると、工事事業者も次の現場に移動しなければならない、といったスケジュールのズレにより更なる工期遅延のリスクが発生することにもなります。

 まさに、太陽光発電所の建設にあたっては、この「工期遅延」による損失リスクをどのように分散するか、という観点が契約書を作成する上で深く検討されることとなります(図1)。

図1●建設中に豪雨で地盤の流れたメガソーラー(本文の内容と直接、関係ありません)
(提供:中村満雄氏)
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