新民法では、「補修請求」のみ

 現行民法上では、発注者は、補修請求と、補修に代わる損害賠償請求を選択的に主張することができますので(現行民法634条1項・2項)、「瑕疵が発生した場合、施工者を信頼できない。別の業者に補修を依頼することにして、その補修費用の賠償請求をする。」と、いきなり施工者宛に補修費用の賠償を求めるケースもあります。

 改正民法562条1項は、目的物に契約不適合が存したときには、「履行の追完」すなわち補修請求のみを定めました。この点をモデル契約約款条項例にて記しています。

過剰な補修を求められた場合は?

 一方、全ての補修請求を受け入れなければならないとすると、過剰請求に対しても対応しなければならないのか? という疑問が生じてくるかもしれません。

 新民法下では、過剰請求に応じなくても良いが、「当社が相当と考える補修は実施する」という回答をすることが重要です。

 追完請求権について規定する改正民法562条1項但書において、「ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる」という新規定が設けられることとなりました(請負契約においても改正民法562条が準用されます)。

 この買主(施主)が請求した方法と異なる方法による履行の追完として「当社が相当と考える補修は実施する」と回答することにより、「債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき」には該当しないこととなります。

 また、「契約不適合が重要でなく、かつ、修補に過分の費用を要するとき」という場面は、改正民法で削除されてしまう現行民法における「瑕疵が軽微で補修に過分な費用が生じる場合」には、注文者は「修補」請求はできず、損害賠償請求のみができるという規定(民法634条1項但書)を明文化したものです。

 削除される民法634条1項但書は、改正民法412条の2にいう「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者はその債務の履行を請求できない」の規定と同趣旨であるので、改正民法後は、改正民法412条の2を使ってクレームに対応していくこととなりますが、文言的には、「契約不適合が重要でなく、かつ、修補に過分の費用を要するとき」という文言が非常に分かりやすいため、モデル条項案では、現行民法634条1項但書の文言を活用しています。